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やっと家に帰るよ

疲れたならば休むが良いさ!!

 電車の中で皆はしばらくお互いに見つめ合うだけで無言だった。


 僕は疲れた体で電車に揺られていると、マッサージ機のような心地好い振動のせいで眠りに落ちそうになっていた。


 夏の夜風が素敵だった。祝福の風、喜びの風。僕は窓に映る自分の顔を見た。頬が腫れていて、おでこや顎のところが青くなっていた。


 美華ちゃんは売店で買った冷たいメロンソーダをずっと僕のおでこに当てていた。


 美華ちゃんの顔には幸いにも傷ひとつ無かったが、おでこが青くなっていた。宇宙人に倒された時、運良く肩から突き飛ばされた形になっていた。


 もし、宇宙人どものクソ野郎が美華ちゃんの顔に小さな傷を1つでも付けていたら、僕はこの手で確実に宇宙人たちをジ・エンドにしていただろう、と思う。


 美華ちゃんは黙って僕を見つめていた。


 僕も見つめ返していた。言葉はなくても心で語り合っていた。不思議と気持ちが伝わるのが分かる。お互いの温もりさえも感じてくる。


 詩音は後悔しているように見えた。おそらく自分のせいで友達を危ない目に合わせてしまった、と考えているのだろう。


 そんな気持ちは心配無用だ。滅多に出来ない経験をさせて貰ったのだから、むしろ感謝の気持ちの方が大きい。


 亜美はボンヤリと詩音を見ていた。 


 亜美の心を覗き見ることは出来ないが、たぶん、ホッと一安心で安堵しているのではないか? と見ていて僕は感じた。


 憲二は無念な表情を浮かべていた。憲二は良くやったさ。憲二のリズムのお陰で、宇宙人たちと上手く駆け引きが出来たのだから。憲二は先陣を切って勇気ある行動を示したんだ。


 梨香は洞窟の中で鋭い観察力を発揮して詩音へと続く道を教えてくれた。


 梨香の冷静な決断力がなければ、事は上手く運ばなかっただろうと僕は実感している。


 瀬都子はあんなに泣きながら震えていたのに、詩音や憲二を頑張って救ったんだ。素晴らしいよ。ブーメラン手裏剣の威力は絶大だった。


 瀬都子のコントロールにも驚いた。2回も宇宙人の左目を捉えるなんて見事としか言えなかった。


 今回は紛れもなく過酷な冒険だった。


 僕は軽い打撲傷と青アザや口を切る怪我をしたし、憲二は腰を痛めてしまい、美華ちゃんも頭と背中を打って意識を失ったり、瀬都子は殴られて鼻血が出たり、顔に青アザが出来るほど腫れていた。

 

 これほど怪我人が多く出た冒険は初めての事だが、全員、無事なのが本当に良かったと思った。心に深い記憶を残した戦いだった。


 1日だけで済む戦いだったが、僕たち以上に瀬都子のお父さん、佐登加未優さんのように毎日戦い続けている大人がいることを今日知った。

 

 更には、宇宙人、異星人や地底人から地球を守るための秘密組織が在ることや、高度な任務を実践している戦隊レベルの関わりが以前から存在していた事実も知った。


 後の事は専門家の大人たちに、すべてを任せよう。考えたり、悩んだりする事はない。僕たちが、もうこれ以上、深入りする必要はないのだから。


 すっかり辺りは暗くなっていた。時刻は午後10時になろうとしていた。


 「フフフフッ」と僕は笑っていた。皆は僕を見た。


 「どうしたのよ?」と美華ちゃんは驚いて言った。


 「フフフフ」と僕は笑いが溢れていた。


 「なんだなんだ? どうしたんだよ?」と憲二は戸惑い気味に言った。


 「いやぁ、あのさぁ、実はさ、犬を飼ったんだよ」と僕は言って笑った。


 「えっ、良いなぁ〜!!」と瀬都子と梨香が声をあげた。


 「どんな犬なの?」と美華ちゃんは瞳を輝かせて言った。


 「ボーダー・コリーとシベリアンハスキーだよ。2匹もいるんだよ。可愛くてさ、早く帰って会いたいんだよね」と僕はニヤニヤしながら言った。


 「2匹もいるの!? 見たいなぁ」と憲二は微笑んで言った。


 「名前はジョンとミッシェル。男と女なんだ。生後3〜4ヶ月くらいかな?」と僕は子犬たちを思い浮かべながら言った。


 「近いうちに会わせて」と梨香は笑顔で言った。

 

 「もちろんだよ。家においで」と僕は梨香に手招きをして言った。


 「俺も見に行っていいかい?」と詩音は照れながら言った。


 「遠慮しないで、いつでも良いからおいでよ」と僕は言って笑いかけた。


 駅に到着すると安堵からか体の力が一気に抜けてしまった。僕たちはアイコンタクトと会釈だけのソフトな別れの挨拶をしてから、それぞれに帰っていった。


 足が重い。美絵も重そうに引きずって歩いていた。同じく亜美も老婆のように腰を曲げて歩いていた。


 家に着くと僕と美華ちゃんは亜美に手を振って頷いた。


 亜美も笑顔で頷いて手を振って家に帰っていた。


 僕と美華ちゃんは手を繋いで家に帰った。


 「ただいま。お腹減ったよ〜」と僕は言って茶の間に入った。


 「竣!! その顔はどうしたんだい!? また派手に暴れたみたいだねぇ。青アザだらけで良い男が台無しだよ。氷を用意して作ってあげるから、それで顔を冷やしなさいよ。


 あら!? 美華ちゃん!? おやおや、美華ちゃんも青アザがおでこに出来ているね。青春だねぇ、フフフフフ」とスズ婆ちゃんが駆け寄って言った。


 スズ婆ちゃんは僕と美華ちゃんの頭をずっと撫でていた。不思議と安らいでいく。


 「今、氷を作るから、休んでいなさいよ。喧嘩でもしたのかい?」とスズ婆ちゃんはさりげなく言った。


 「まあ、ちょっとね。色々とあって。あははは」と僕は言って台所に行き、冷蔵庫を開けて麦茶を飲み干した。


 母、幸子がトイレから戻ってきて僕を見ると、顔を引き吊らせて言った。


 「竣!! なんだい? どうしたのさ? 美華ちゃんまでどうしたのよ〜ん…」と母、幸子が駆け寄って言った。


 僕の頬を擦り出したが、力強くて逆に痛かった。

 

 「あははは。何ともないから心配しないでよ。あははは」と僕は笑って誤魔化しながらソファーに腰を沈めて大きくアクビをした。


 「夏奈子は?」と僕はお母さんに聞いた。


 「自分の部屋でジョンとミッシェルと遊んでいる。竣もう喧嘩は止めなさい! ってあれほど言ったでしょうが!! 最近、喧嘩番長みたいになっているよ。喧嘩ばかりしていたら、ノータリンの馬鹿丸出しになるよ」と母、幸子は言って僕の晩御飯の支度をしてくれた。


 「美華ちゃんの分も作ってくれるかい?」と僕は母に頼んでみた。


 「美華ちゃん? 美華ちゃんも大盛りで良いね。美華ちゃん、そんなところにいないで。ソファーに座んなさいよ。あれ? ちょ…、あら!? ちょっと美華ちゃん!! どうしたのよ〜!? 顔色悪すぎないかい? 2人して何やってんのよ? どうしたのよ?」と母、幸子は美華ちゃんに駆け寄って美華ちゃんの体を強く抱きしめた後、美絵ちゃんの顔を撫でまくった。


 美華ちゃんも痛いのか、照れながらも少し顔をしかめていた。母の撫で具合いが強いためだろう。

 

 「美華ちゃん、竣とバトルしたのね? そうでしょう?」と母、幸子は仁王立ちで美絵ちゃんに問い質した。


「えっ!? いやぁ、ま、まあ、えへへへ」と美華ちゃんは照れ臭そうにハニかんで母、幸子の追求に乗る事にした。美華ちゃんは顔を赤らめて自分の頭を掻いていた。


 「『喧嘩するほど仲が良い』とは言うからねぇ。まっ、程々にしなさいよ!」と母、幸子は美絵ちゃんに優しくウインクをして言った。


 「お母さん和雄爺ちゃんは?」と僕はさっきから見当たらない和雄爺ちゃんに気づいて言った。


 「なんでも『デモテープを作るから部屋に入るべからずだよ!』と言って、ずっと部屋に籠ってね、ギターをかき鳴らしているわよ。シーケンサーの調子が悪いとかなんとか1人で文句を言っていたけどね。メドレーだか、なんたら、かんたら言ってたわ。もう、夜の10時半よ」と母、幸子はニンジンを刻みながら言った。


 「ふ〜ん」と僕は言ってテーブルに着いた。


 「竣、ちょっとだけ、夏奈子ちゃんの部屋に言ってきても良い?」と美華ちゃんは嬉しそうに言った。


 「ああ。行っといで」と僕は笑顔で頷いた。





つづく

ありがとうございました!!また、宜しくお願い致します。

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