鳥のように自由に空へ
竣、美華、憲二、詩音、亜美、梨香、瀬都子の冒険の結末とは?
謎の生物たちは煙のように姿を消してしまった。
僕らはこの場から急いで逃げることにした。
地鳴りのような音が遠くから近付いてくる。僕は今起こったことの全てがジョークだと思いたかった。
僕は美華ちゃんを背負い、詩音は瀬都子を背負った。亜美と梨香が憲二の肩を抱いて支えていた。
僕は地鳴りの大きな音に今までに無いほどの激しい恐怖を感じて動悸がしていた。息が苦しい。
皆でここから逃げるのに必死だった。
入り口から空間スペースまでの距離は、およそ500メートルほどの長さだ。とにかく洞窟の入り口に早く戻りたい。
僕は懐中電灯の明るさをMAXの5にして言葉もなく悪路を早足で急いでいる時に、無意識に天井を見上げていた。コウモリだ。コウモリがいるところまで来ればもう大丈夫だ。
「もう少しで出口だ」という気持が先走っていた。
入り口まであと200メートル足らずだ。今の時間だと夜のはずなのに、入り口付近で煌々とした明かりがたくさん見えていた。
僕達は明かりを目指し、がむしゃらに走り出した。
「皆、助かったぞ!!」と僕は叫んで出口に降り立った。
辺りは群衆に溢れかえっていた。百人近くはいた。
たくさん野次馬やテレビのカメラマンがいた。明かりの正体は報道陣による照明だった。
中には地元の情報番組のテレビ取材陣が、駅から程よく離れた場所にあるレストランや定食屋の取材中に洞窟の騒ぎを聞きつけて、カメラマンが急いで現場に来ていた。警察もたくさん来ていた。
出口にいる僕たちを見て驚いたカメラマンとアナウンサーは、走ってきて僕たちを取り囲んだ。
「君たちは、ここで何をしていたんですか?」とアナウンサーが僕にインタビューをしてきた。
「迷子になった友達を探しに来ていたんです。それよりも、この騒ぎは……。何の集まりなんですか?」と僕は逆にアナウンサーに質問をした。
「見てくださいよ!」アナウンサーが手招きをして僕を連れ出すと洞窟から少し離れた場所の木の側で、8人組の宇宙人、異星人のうち、1人逃走して生存、7人が遺体となって横たわっているのが目に入ってきた。
宇宙人の生存者はコブラのようだった。亡骸は胸に大きな弾痕の痕があり、側にはオレンジのジャケットを纏った10人組の猟師が立っていた。
「こ、これは?」と僕は考えがまとまっていない状態で言った。
「最近、畑を荒らしている熊がいて、大変、困っているというので駆除をして欲しいという連絡が、我々鷹岡狩猟会に町民から頻繁に寄せられていましてね、2時間前から山に登っていたんですよ。
下山をして、しばらくすると、洞窟から8匹の熊が飛び出してきたので、我々10人のうち、8人が鉄砲隊を組んで熊の胸を撃ち抜いたんですよ。
7匹は撃ちましたが1匹が逃げてしまったんです。死骸の確認をしてみたら『おい、熊ではないみたいだぞ! どうも変だな』と猟師たちが口々に言うもんですからね、写真を撮って知り合いの学者に送付したら、すぐに返信が来ましてね、『未確認生物の可能性が高い。現場を荒らさずそのままに。我々が急行する』と届いたのです。
偶然近場で取材中のカメラマンにも事を知らせまして、他のテレビ局にも電話したという訳なんです」と鷹岡狩猟会のリーダー佐々木卓弥(56歳)は僕に話してくれた。
「学者はどこですか?」と僕は聞いた。
「あそこで取材を受けている人がそうです」と指を差した。
「あ! お父さんだ!」と瀬都子は言った。
「なんだって!?」僕らは驚いて叫んだ。
「詩音、お父さんの近くまで運んでくれる?」と瀬都子はティッシュで鼻血を拭きながら言った。
「分かったよ」と詩音は言って瀬都子をおんぶしたまま父親の傍まで運んだ。僕らも詩音の後に続いた。
「お父さん」と瀬都子は力なく微笑んで父親に話し掛けた。
「瀬都子!? 何を……、何をしているんだよ!? こんなところで! おい!? 怪我をしているじゃないかよ!」と父親は目を丸くして驚きながら瀬都子に駆け寄った。
「ちょっと、もう取材はこの辺で」と瀬都子の父親が言うと、マスコミは足早に立ち去っていった。
瀬都子の父親の胸には、『佐登加未憂【ギブ・ピース研究所・リーダー、優英大学教授】』と名札があった。
「あのね、お父さん、実はさあ……」と疲れきった瀬都子が喋ろうとするのを僕は遮った。
「瀬都子、無理するな。あとは僕が話すよ」と僕は瀬都子の背中を擦りながら言った。
「わかったよ〜」と瀬都子は弱々しかったが優しい笑顔を見せて頷いた。
「初めまして。瀬都子さんと同じクラスの瀬川竣といいます。実は……」僕は瀬都子の父親に、洞窟であった事の一部始終を、身ぶり手振りで冷静に詳しく話して聞かせた。
佐登加未憂は自分の腕を組んで真剣に僕の話を聞いてくれた。
「わかった。後は私達に任せなさい。他の友達も安心しなさい。私達の研究所は宇宙人、異星人、地底人の存在を認めて、長年、研究をしているのだ。これから、『特別組織第1団』が逃げた1人を探すために山を汲まなく捜索をする。証言から明らかに人間ではない。
更にだね、『スペース・J・戦隊』という最強特殊戦隊の組織も深夜に参加する予定だ。
今回の君たちの件についてだか、極秘、機密、オフレコのようにして扱う。今後は、私たちによる変な詮索は無いし、起こさないから、さあ、もう帰るんだ。瀬都子を宜しく頼むよ」と佐登加未憂は言って向こうにいる報道陣の元へとゆっくり歩いていった。
佐登加未憂の背中には研究者としての威厳ある使命感と、瀬都子の父親としての無防備な優しさが同居していた。
◇◇◇◇◇◇◇
僕らに起こった事は、結局、闇に葬られることになるだろう。
手柄はレストレード警部の手に渡ることになるのだ。
耳障りな地鳴りが、いつまでも鳴り響いていた。僕らはボロボロの状態で駅へと歩いて向かった。
誰一人、話す者はいなかった。
今の僕の気持ちを言葉にすると『早く家に帰って、風呂に入って、メロンソーダを飲んで寝たい』だ。
僕は振り返って月夜を見上げた。
大きな黒い鳥が悠然と月を横切って飛び去っていくのが見えた。僕は驚いて皆の顔を見たが、僕以外、誰一人として鳥の存在には気付いてはいなかった。
つづく
ありがとうございます!また宜しくお願い致します!




