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一時接近

今日も1日2話の投稿をしました!肩のコリが現れました(笑)楽しんでくださいね!

 亜美は詩音のことが好きみたいだ。以前から、うっすらとそんな予感はしていたけど、詩音を助けたいという決意に満ちた亜美の顔を見ていると、僕から見ても、この恋は確かな恋だと、気持ちなんだと確信をした。恋をする女性は本当に綺麗で美しいと思う。

 

 亜美も詩音も、どこか似た者同士同士だった。惹かれ合う2つの魂が共鳴している渦中に、僕らは立ち会い、間接的に関わっていた。

 

 「皆、見て。あの舗装されていない道を少し降りた場所に洞窟があるのよ」と亜美はガードレールから少し身を乗り出すと、左手でLの字を作り、ここからは、まだ見えないが、洞窟の方角を指差した。

 

 「洞窟まで結構歩くのかい?」と僕は足のストレッチをしながらたずねた。


 「10分弱くらいかな? すぐだよ」と亜美は言った。

 

 「よし! 皆! 気合いを入れていこうぜ! 念のために確認です。武器や危険な道具等を持ってきている人は手を挙げてください」と僕は左手を上げて皆に言った。

 誰も手を挙げなかったが、瀬都子だけが、何故か落ち着きなく体を動かしていた。

 

 「どうした? 瀬都子?」と僕は瀬都子の肩に手を置いて言った。

 

 「誰も手を挙げていないので…。挙げずらくて…。竣くん、あのですね、わたくしはですね、武器を持参しています」と身軽なカッコをしているはずの瀬都子は言った。

 

 瀬都子はジーンズのポケットに手を入れてまさぐると、爆竹、100円ライター、小型カッター、手裏剣7枚、熊撃退スプレー、爪楊枝、輪ゴム、唐辛子、が出てきた。

 

 「よくこんなに持ってこれたねぇ」と憲二は目を丸くして言った。

 

 「本当はビスケットも入れたかったけど、歌のようには上手くいかないから…」と瀬都子はへんちくりんな事を言った。皆は吹き出して空気が少し和んだ。

 

 「刃物は危険だ。カッターは危ないから僕が預かる。手裏剣も…」と僕が言おうとしていたら、「手裏剣だけは勘弁して!」と瀬都子は懇願してきた。

 

 「う〜ん。でもなぁ。手裏剣を持っていて怪我はしないかい?」と僕は心配しながら言った。

 

 「大丈夫。今度は、ちゃんとケースに入れますから」と小さなチョコレートの箱を、後ろのポケットから取り出して手裏剣を入れた。『ここまで来るのに、前のポケットに裸の手裏剣を入れて、怪我もせずに、よく持ってこれたなぁ〜』と僕は変に感心をしてしまった。

 

 「瀬都子、本当に大丈夫なんだね? 大丈夫なら手裏剣は任せるよ」と僕は小型のカッター以外の武器を認めて笑顔で言った。

 

「じゃあ、行くわよ」と額の汗をぬぐいながら亜美は言った。

 

 汗が止まらない。背中の汗が止まらずTシャツが背中に貼り付く。スマホで気温を調べるとこの辺りの地域は30度もあった。

 詩音はこの灼熱の中で、足に怪我を負って逃走を続けていると思うと、あまりにも酷で仕方がなかった。

 

 「あそこに2つに割れた岩があるでしょう? あの岩の向こう側に洞窟があるみたい」と亜美は声を潜めて言った。

 

 しつこくハエが辺りを飛んでいた。憲二は手でハエを追い払っていたが、アゲハ蝶がこちらに向かって軽やかに飛ぶのを見つけると、目を輝かせて捕まえようと身構えた。憲二が捕まえようとしたので、梨香が「ダメ!」と鋭く発したので憲二は動きを止めた。

 

 僕はアゲハ蝶が上下斜めにと、戯れるように舞う姿を見ているうちに、催眠に掛かりそうな気がしてきた。

 

 地面に目を移すと、触るのが憚れる妙な虫が至る所で蠢いていた。

 

 7分ほど歩くと2つに割れた岩の側にまで来た。

 僕はこの岩に名前を付けたくなってきた。2つに割れた岩は、見事なまでに滑稽で嘘くさい形をしていた。瀬都子が岩に触っていた。何か感想を言うのかと待ったが、瀬都子は何も言わずにハンカチで手を拭いた。

 

 「亜美、お疲れ様。あとは僕が先頭に立つから、後ろで、皆と離れないように固まって動くようにしてくれ。何か異変があったら、すぐに、僕と憲二に知らせるようにしてくれ」と僕は気合いを込めて話した。

 亜美は頷いて、美絵ちゃんの横へと移動した。

 

 「よし出発だ」と僕は軽く肩のストレッチで回しながら言った。詩音を狙う追手の姿や気配はなかった。

 

 僕らは洞窟に向かって再び歩いた。

 「もう少しだからね」と亜美は皆を励ますように言った。 

 僕は草むらから小動物が飛び掛かってくる姿を想像していたが、本当にそんな場面が訪れたら左のアッパーカットで殴り倒してやる、と強くイメージしていた。

 

 洞窟の穴が現れた。シンプルで、大きなトンネルみたいな穴がポッカリと口を開けていた。

 冷たい風が洞窟から吹いてきた。僕らは緊張感が一気に高まってきた。

 「竣くん、あれを見て」と美絵ちゃんが僕の横に来て洞窟の側の地面を指差した。

 

 光る物が落ちていた。

 それは紛れもなく詩音のスマートフォンだった。僕はスマートフォンを拾って調べてみた。間違いなかった。詩音が普段から使っているスマホだった。

 

 僕らは激しい衝撃を受けていた。『もしもの覚悟をしなければならないのかも…』と悲観的な考えが頭によぎってくる。

 

 「今から洞窟に入る。僕が持参した長持ちする懐中電灯の出番だ!」と僕は言って、持ってきた手提げ袋から懐中電灯を取り出して明かりを点けた。

 手提げ袋には、それなりの道具を入れてあった。主に、救急箱に近いものと、皆には言っていなかったが『ある武器』も入れてあった。

僕らは決意をして肩を寄せ合いながら洞窟へと入っていった。

  

 

 

 

つづく

どうもありがとうございました!また頑張りますので、宜しくお願い致します。

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