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君に逢いたい

 歌うたいボーイと鼻くそボーイは信号が青に変わると全力で走り出した。


 二人が横断歩道の真ん中辺りで、ピタリと止まると、今度は歌うたいボーイが反撃をした。


 「最強電撃・レッド・キング・ウイング・パンチだ!」と言って、横にいた鼻くそボーイのおしりを目掛けてパンチを繰り出した。


 鼻くそボーイは、跳び跳ねながらパンチをかわして、「スーパー・ミラクル・エンジェル・バリアーをしたから、絶対に当たりませぇ〜ん♪」と言って何度も何度も跳び跳ねた。


 「バリヤーを使うのは反則だろぉ! じゃあ、『あれ』を使うからな!」と歌うたいボーイが言ってきた。


 「『あれ』って!? も、もしかして? 『あれ』のことか? やめてくれぇ〜い! 『あれ』だけは、ぜっ〜〜たいに、やめてくれぇ〜いっ♪」と鼻くそボーイは真剣な表情を見せ、劇画的な振る舞いで演じながら言った。


 「バリヤーを破る、伝説のパンチ、『トルネード・スーパー・ドラゴン・ファイヤー・レーザー・エンジェル・バージョン・クリスタル・ボンバー・エアコン・Zパンチ』を出す時が来たんだぁーっ! いくぜぇい!!」と横断歩道を渡った所で歌うたいボーイが、その、トルネード…、なんとかパンチとやらを出す準備を始めた。

 

 歌うたいボーイは腕をあげてジャンプをすると、歌を歌いながら決めの変身のポーズを披露した。鼻くそボーイに向かって「食らえ! スーパー・ハヤブサ・キング・パンチ!」と、何故か、さっきとは別名のパンチを言ってパンチをした。


 『さっきのは、長いパンチ名だったからなぁ〜。ブフッ。自分で作ったパンチ名を、すでに覚えていないんだな。ブフッ』と僕は笑いながら二人の戦いを見ていた。

 歌うたいボーイ&鼻くそボーイはずっと戦いを続けていたので、僕は走ってその場を後にした。


 「あじさい公園」はあと、150メートル程で見えてくる。僕は逸る気持ちを抑えながら走り続けていた。


 あじさい公園に着くと、ベンチの側に、あの段ボールがそのままの状態で置いてあった。

 子犬の姿が見えない。焦燥感に駆られて箱に駆け寄り覗き込んだ。

 子犬はスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。


 「か、か、可愛い♪」と僕は胸を鷲掴みにされてしまった。どこから、どう見ても、シベリアンハスキー犬の子犬だった。


 「血統書の捨て犬か…。捨てた馬鹿は絶対に許せん!」と僕は滑り台の横にある鉄棒に向かって怒鳴った。


 「どうしようかな?」と僕は箱を持とうとしたら子犬が目覚めた。


 「あらっ!? 起こしちゃったねぇ? ねんねしてたのに、ゴメンなちゃいね」と僕は話し掛けた。


 「クゥーン、クゥーン」と子犬は甘えた声を出した。


 「ねんねしてたの?」


 「キューン、キューン」


 「オス、メス?」と僕は言った後に片手で子犬の前足を支えた。メスだった。


 「ヘイ! 彼女! 家に来るかい?」


 「わぁん、わぁん!」


 「本当は家はダメだけどさ。まっ、どうにかなるかな? 母を説得しよう」

 僕は優しく箱を抱き抱えて公園を出た。


 『夕陽は「寂しいね。またね」と言いたくないがために、あんなに切なくて、別れがたい光を放っている。君に逢いたい。愛をこめて夜通し君を想い続けている』というジャン・アレックス・水詩の最新作の詩、「君に逢いたい」を思い出しながら僕は駅へと向かっていった。





つづく

ありがとうございました!また読んでくださいね!

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