Boys
僕は次の駅で急いで降りて引き返す事にした。今ならまだ子犬はいるはずだ。
僕は駅を出ると「あじさい公園」に向かって全速力で走った。ひたすら走った。信号が赤になったので僕は止まった。
小学生の男の子二人組が、僕の隣で同じように信号が青に変わるのを待っていた。
ひとりが歌を歌いながら、プラスチック製のバットを振り回していた。
もうひとりが歌に合わせて、ステップを踏みながら鼻くそをほじっていた。
ステップをやめると鼻くそを「歌うたいボーイ」の男の子に付けようとした。
「やめれや〜!」と歌うたいボーイがバットを横に振って応戦をする。
「鼻くそボーイ」は、かわしながら歌うたいボーイに迫っていく。
「やめろー♪」と歌うたいボーイはおどけながらバットを大きく振り回す。振り回した時に僕の右足に当たったのだが、僕に目もくれず謝らないで、バットを振り回し続けている。バッドの風を切る音が彼らの無益な戦いを象徴して聞こえていた。『さあ、どちらが勝つのかな?』と僕は心の中で思った。実に微笑ましい光景だ。
「食らえ! 鼻くそビーム!!」と鼻くそボーイは言って、人差し指と親指で輪っかを作ってから指で鼻くそを弾いた。歌うたいボーイは、しゃがんで避けると、
「汚ねぇ〜♪ あははは!」と楽しそうに笑った。
鼻くそボーイも楽しそうに「あははは! 少しミスった」と笑いながらクルクルと体を回転させていた。
歌うたいボーイが電柱に向けてバッドを当てていた。ペコン、ペコンと、とぼけたような音を立て、電柱にバットが食い込むような形で当たっていた。
鼻くそボーイが「俺にもやらせてよ」と言って、バッドを受け取ると素振りをしてから、同じように電柱に当てた。ペコン、ペコンと音が響き渡る。
「おじさん、ボタン押した?」と鼻くそボーイが僕に言ってきた。
「えっ!? ボタン!?」
「青にする押しボタンだよ」
「あっ! 押すの忘れてたわ」と僕は言ってボタンを押した。
「おじさん、じゃなくてね、お兄さんだからね」と僕は注意をして言った。
鼻くそボーイは頷くと、本腰を入れて鼻くそをほじり出した。
つづく
ありがとうございました!




