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夜想曲

竣たちの大変な1日が終わろうとしています。若さは傷の治りも早いとは思います。ですが、心に残った胸の痛みは、時々、思い出してしまうかもしれません。今晩は疲れた体を癒すためにも、竣は夜想曲を聞きながら眠りにつくことになるのでしょう。

 「肝試しはどうする?」と憲二は言って時計を見た。時間は午後9時になっていた。皆は

 

 「今日は止めて日を改めることにしよう」という話になった。

 

 本当に今日は大変な1日だった。警察署に行ったストレスが完全に消えた。皆のお陰だ。とても助かった。

 

 亜美の家で皆で集まり怪談をした事で気が紛れたし、嫌な気持ちを忘れることが出来た。外に出ると星空が美しかった。

 

 「バイバイ! また明日〜」と亜美は皆に手を振った。

 

 「また、明日遊ぼうね!」と梨香は皆に両手を振ったあと、自転車のベルを鳴らしながら闇夜に消えていった。

 

 憲二が「いやぁ〜、怖かったねぇ。特に美華ちゃんと瀬都子の話は、今晩、寝れなくなりそうだよ」と言って「じゃあね!」と手を上げて走っていった。

 

 憲二は辛ッシュシタツンのせいで口のまわりが赤く腫れていた。いや、全員の口のまわりが赤く腫れていた。

 

 「明日は予定ありです。明後日遊びましょう」と瀬都子が頭を下げて一礼するとスケボーに乗って去っていった。

 

 それぞれが家路に向かう後ろ姿を見送っているうちに僕は急に凄く寂しくなってしまった 

 

 僕は『楽しい時間を過ごせるのは、そんなにあるものではないんだな。大切な友達がいてこその人生なんだ』と強く思っていた。

  

 別れ際に手を振る美華ちゃんの姿を見ていたら、この瞬間がいつの日か思い出になった時、『いつか大人になったら、僕の心は今と変わってしまうのだろうか?』という考えが頭に過り、ちょぴり不安で切ない気持ちになってしまった。

 

 いつかは大人にならなければならない。いや、なりたくない。悩みは突然やって来るものだ。常に考えていると悩みばかりを意識してしまい身動きが出来なくなってしまう。

 

 僕は「今日は本当にどうもありがとうね。嬉しかったよ」と亜美と握手をして言った。

 

 「また、明日ね! 竣、これからも、いつでも良いから遊ぼうぜ! 今度は詩音も仲間に入れてあげようよ!」と亜美は笑いながら言った。

 

 「いいね。詩音に連絡しておくよ」と僕は言って自宅に戻っていった。

 

 家では和雄爺ちゃんがビートルズの「ドント・レット・ミー・ダウン」をオベーション・レジェンド・リミッテッド1651-7のアコースティック・ギターを弾きながら、スズ婆ちゃんに向かって歌っていた。

 

 スズ婆ちゃんは1日早く帰宅したようだ。

 

 僕の母親、幸子はハーモニーを重ねていた。パートは、なぜか難しいジョージの部分を歌っていた。

 

 僕はポールのパートに合わせて途中から参加して歌いかけた。

 

 「スズ婆ちゃん、上手くいったわけだね! 戻ってきて嬉しいよ」と僕はスズ婆ちゃんに言ってウインクをした。

 

 「楽しい一時を過ごせたよ! ありがとう」とスズ婆ちゃんは言って優しく笑った。

 

 僕は自分の部屋に行き「スピード・オブ・サウンド」のレコードを取り出してステレオの上に乗せた。針を慎重に下ろすと小さなノイズが鳴った後に「心のラヴ・ソング」が流れてきた。

 

 

 

 

つづく

ありがとうございました!またよろしくお願いいたします。

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