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『辛ッシュシタツン』

読者の皆様、怪談はいかがでしたか?若干、面白い話も混じっていましたが、楽しんでくれたのなら嬉しいです。ありがとう。今回は、怪談を話終えた竣たちをリラックスさせたくて書いてみました。

 美華ちゃんが話し終える頃には、時刻が午後8時30分になっていた。

 

 僕らは実話の怪談の迫力と恐怖の余韻に浸りながら、それぞれの話を思い起こしていた。

 

 「はい! これにて怪談は終了致しましたぁー! 皆様、お疲れさまで御座いました。ありがとうございました。また機会がありましたら『怪談2』を夏休み中にしたいと考えております」と亜美はホッとしたのか滑らかな言葉が淀みなく出てきた。

 

 「ジャンジャン♪ ここで皆に挑戦状を送る!」と亜美は言って、机の上に置いてあるニタシ(『2+4』24時間営業のスーパーマーケットの事)の袋からポテトチップスの袋を取り出した。

 

 亜美は麦茶を皆のコップに注いだ。ポテトチップスは今話題のスナック菓子『辛ッシュシタツン』という商品名だった。

 

 「この『辛ッシュシタツン』は期間限定商品だよ。食べれる勇者はいるのかな? 怪談で冷えきった体を暖めようよ!」と亜美はペットボトルの麦茶をリズムよく叩きながら言った。

 

 舌と喉が焼けるように熱くなるという激辛トウガラシ成分が、最近、作られて話題になっていた。その名も「イチェッガ」。一説にはトウガラシの辛味成分120パーセントも含まれていると言われている。

 

 トウガラシは「スコヴィル値」という単位で辛さが表される。トウガラシにはカプサイシンという辛味成分があり、辛さの他に、脂肪燃焼効果、食欲増進の効果がある。辛さは痛みと同じことでスコヴィル値が高ければ高いほど痛みが増えると考えた方がいい。

 

 現在、もっとも辛いと言われているトウガラシは、イギリスのウェールズで作られたトウガラシ、ドラゴン・ブレス・チリだ。新作映画にありそうな名前みたいだよね。

 

 「ドラゴン・ブレス・チリ」のスコヴィル値は、なんとビックリ! 248万スコヴィル。辛そう。5位のハバネロのスコヴィル値が10~40万スコヴィルだから相当に辛い。

 

 一方、『辛ッシュシタツン』の辛味成分は約87パーセントの「イチェッガ」が含まれている。生みの親であるマタノタ・マ・ドルーゴ博士(48歳)は『興味本意で無理して食べても良いけどね、なるべく、食べない方が良いとは思うんだよねぇ〜。僕? こんなことを言うと、なんだけどもね、あのね絶対に食べない。だってね、僕は生まれつき辛いのが苦手なんだよねぇ』と以前テレビのインタビューで話していた。 


 ちなみに100パーセントの本格的な「イチェッガ」は593万スコヴィル値もあるのだ。1番辛いのだが、まだ審査途中でもあり正式には認定されていない。ドラゴン・ブレス・チリを遥かに越える最強の辛さだ。

 

 亜美は袋を手で破いて開けた。部屋の中が一気に辛い匂いに包まれて皆が一斉に咳き込んだ。

 

 「目が辛い! 鼻も喉も! 世界が辛い!」瀬都子は泣きながら言った。


 「鼻水が、僕の鼻水が!」憲二が鼻水を顎まで垂らして目を閉じて言った。

 

 「からぁ〜! からぁ〜!」亜美が鼻を押さえながら梨香に向けてうちわで扇いだ。

 

 「亜美! ちょっと、辛いって! やめてよ!! この部屋、辛いって!」梨香は亜美に手で扇ぎ返しながらほとんど泣いていた。

  

 「『辛ッシュシタツン』を是非ともこの機会に食べてみたい!」と僕は涙と鼻水を流しながら笑って言った。


 「ちょっと、ゴホッ、ゴホッ。から〜い! 窓を開けるよ」と美華ちゃんが素早く窓に移動した。全開した窓から爽やかな夏の夜風が入ってきた。皆は窓に移動した。

  

 「食べれないよ〜。匂いだけで既に食べたみたいだもん」梨香はショボショボした涙目になっていた。

 

 「辛いとかを素早く認識する味覚、嗅覚の高性能ぶり。五感の神秘、脅威。果たして第六感は存在するのでしょうか? 私はイエス、あるに決まっていると伝えたいのです。なんだか…す、すみません。あまりにも空気が辛くて、辛くて。私のメガネが曇っているのと同様に、思考も曇ってしまっていますな。えへへ」と瀬都子は人体の神秘を語りつつ話に着地点がない事を皆に詫びた。

  

 「よし! 僕から食べるよ! 『辛ッシュシタツン』を3枚、一気に食べるよ! 僕は家では辛さには強いと定評があるからね」と僕は自信を持って3枚を口に放り込んだ。

 

 「ブガァー!! ガバッ!! ギャラタァ〜〜!! から、から、からぁーーーい!」僕は鼻から始祖鳥の卵が出てきそうなくらい広がり、目から喉にかけて、やけっぱち気味で、アマゾン奥地の熱帯雨林で53度の灼熱の中を、ほふく前進をしながらエルドラドを目指したが、現地の先住民に呼び止められて「方向と場所が違うってばよ! 南に約80キロ行った所にエルドラドがあるっぺよ。俺たちがよぉ、案内してもいいっぺよ」と丁寧に行き先を案内してくれた優しさに触れ、感動し、嬉しくて照れてしまったようなくらいに顔が赤面して悶絶した。

 

 「水!! だ、だ、誰かさん、頼む水くれぇ〜い!!」手を差し出したが皆はニヤニヤ笑っているばかりで水をくれない。

 

 「憲二、はやくぅ〜〜! 水をくれー! 早くくれよ!!」とねだるが憲二は笑っていた。

 

 美華ちゃんが「はい」と言って僕に麦茶を渡した。 

 「ありがとう」と言って美華ちゃんを見たら美華ちゃんまで涙を浮かべて笑っていた。


 僕は一気に麦茶を飲み干して、今度はオレンジジュースをコップに注いで一気に飲み干してから、また麦茶をコップに注いで飲み干して、チョコレートのドーナツを食べた。

 

 お口の中をカオスからパラダイスに変えるためにはたくさん放り込むしかなかった。

 

 「次はわたくしが参ります」と瀬都子は真っ直ぐに腕を上げて、その腕をゆっくりと下ろして『辛ッシュシタツン』の袋に直接入れると『辛ッシュシタツン』のポテトチップスを驚くことに5枚も取り出した。

 

 「瀬都子、16歳。いきま〜す!」瀬都子は口に放り込んだ。

 

 「ぶばぁん!! ぎむ、ぎむ、ぎむ、ぎむ、ぎむ、ぎむ、ぎょえ〜〜っ! ゴッホッホ! もう、いやーん! からあーんい!! う〜ん! のたうち回っちゃう」と瀬都子は空気が欲しくて喘いで部屋を歩き回った。

 

 「おい憲二くんよ、水、水ーっ。はやーく! はやーく! 水!! からぁーい! もう、本当に、いやぁーん! 頭が割れそ~う!! アフフフフ。ほほほへほへほ」と瀬都子はエキセントリックに笑って言った。

 

 憲二はニヤニヤ笑って麦茶が入ったコップを手に持って高く上にあげた。

 

 「こら憲二! ちょっとぉ!!」瀬都子は憲二の脛を蹴った。


 「いちゃあ〜い!!」と憲二はどこかで聞いた叫び声をあげたので、皆は思い出して吹き出した。

 

 「はい」と梨香が瀬都子にメロンソーダを渡した。

 

 「次は私ね」と美絵ちゃんは言った。

 

 美華ちゃんは深呼吸をした後、なぜか「♪ あ、あ、あ、あ、あー♪」と発声練習をした。

 

 「いきますっ!」美華ちゃんは3枚『辛ッシュシタツン』のポテトチップスを取って口に放り込んだ。

 

 「えっ!? あれれ!? 『辛ッシュシタツン』、全然辛くないよ? あれ? 私は辛いの得意だからかな? あれ?」と美華ちゃんは首をひねってもう2枚口に入れてみた。


 「おおー! 凄い!」と皆は拍手をして美華ちゃんの健闘を讃えた。

 

 「マ、マジかよ。マジなのかよ」僕は驚いて絶句してしまうほどだった。


 まだ、僕の舌がヒリヒリしているというのに。

 

「俺を甘く見るなよ! 毎日、カラシで歯を磨いているんだぜ!」と憲二は明らかな嘘を口走りながら『辛ッシュシタツン』のポテトチップスを、なんと、8枚重ねて一気に口に投げ込んだ。


 憲二はムシャムシャと口を動かして、目を充血させ、動きが止まった。

 

 誰もが固唾を飲んで見守る。憲二は目を開けたまま気を失いつつあるようだった。僕は憲二の頬を1発軽く叩いた。

 

 「ブハァッ!! あー!! ガバッ!! ウグァ〜! これは、これは、これで、これで辛ッシュシタツンでちた?」憲二は言って泣きながら麦茶を飲み干した。

 

 突然、

 

 「いたぁーい!!! あたたたた! ギャバい〜!! 喉がヤバいなり〜ぃ! 麦茶を、麦茶を!」と美華ちゃんが絶叫しながらジャンプしていた。


 どうやら時間差で辛さが来たようだった。皆はヨレヨレになりつつあるのに美華ちゃんの健闘を見て気力を出し「へへへ」と弱々しく笑った。

 

 最後の砦、梨香に託す。辛さにぜひとも耐えて欲しい。

 

 「私に任せてよね!」と梨香が気合いを入れて『辛ッシュシタツン』をまたしても憲二に続いて一気に8枚も口に含んだ。

 

 「辛し! これはかなり辛し! ぺっ!」とティッシュに吐き出して『辛ッシュシタツン』の袋を持って立ち上がると「こんなもん食えるかーっ!! あっち行け〜! 2度とこんな物を食ってたまるかよ。ナメんなよ、もう嫌いになったよ。good-bye!」と叫んで窓から放り投げた。

 

 

 

 

つづく

ありがとうございました!またよろしくお願いいたします。

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