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瀬川竣の話

楽しんでくださいね!今回は主人公の竣の話です。どんな話になるのやら。ユーモアのある竣のことですから、記憶に残る話が聞けるかもしれませんね。

 「皆は宇宙人や未確認飛行物体について、どう思う?」と僕は照れもなく真顔で言った。


 「いるに決まっているだろうがよう!」と憲二は吠えるように言った。


 「いないねー」と亜美は汗を拭いながら言った。


 「どうなのかな? 迷うよね。気持ちとしては半々だけども、宇宙人、いて欲しいな」と美絵ちゃんは、お茶を飲みながら言った。


 「確実にいるような気がするけども、いないような気がしないんですよね。地底国の一件以来、私はいると思います」と瀬都子は持っていた本をパラパラ捲りながら言った。


 「私はいないと思うよ。いたら『ワレワレハウチュウジンデス』と言わせてみたいね」と梨香は宇宙人の声を真似て、喉に手を小刻みに当てながら声を振るわせて喋ったので皆がドッと笑った。


 「ねぇ、竣くんはどう思っているの?」と美絵ちゃんは首を傾げて僕に聞いた。

 

 「これから話す内容で皆が改めて判断して欲しいんだ。美絵ちゃんの質問についてだけれども、僕は『いる』と思うよ」と僕は言って、ゆっくりと皆の顔を見回して頷いた。

 

 皆は真剣な顔をして話を聞いていた。

 

 「僕が中学2年の頃の話なんだ。ある夏の日の昼頃の事だった。

 当時は、1階の和雄爺ちゃんの部屋が僕の部屋だったんだ。僕が部屋のベッドで寝そべって本を読んでいたんだよ」

 

 「何の本?」と憲二は割り込んできた。


 「ビートルズ関連の本だったかな?」

 

 「ポールの自伝?」と憲二は左腕を挙げて言った。


 「ああ、確か、そうだったよ」と僕は頷いた。

 

 「僕は気分を変えるために、本を読むのをやめて窓の外を何となく見ていたらね、オレンジ色の飛行物体が空に止まっている事に気付いたんだ。

 

 最初は『気球かヘリコプターかな?』と思ったけれども、物体は少しも微動だにしないんだよ。外の様子を見回したけど、辺りには誰一人いなかった。

 

 僕は窓を開けて、手を大きく振りながら『おーい! 僕は瀬川竣だよ〜! ここにおいでよ! 歓迎するよ!』と面白半分で叫んでみたらさぁ、オレンジの物体が点滅し出したんだよ!


 僕はギョッとして、体が凍りついたね。手を振るのを止めたら、オレンジの物体もピタリと点滅を止めたんだ。『えっ!? 僕の声に反応したのかな? 気付いたのかな? まさか、そんなの、ありえないよね』と思ったので、もう一度手を振りながら言ってみたんだよ。


 「はじめまして。天気が最高ですね! 今日は散歩日和ですねぇ。日向ぼっこ、日光浴を兼ねての空中で停止中なんですか?」と言ったら、UFOが、フォワーン、フォワーンと、ゆっくり点滅し出したから、確実に僕の声に反応していると分かったよ。

 

 僕は神経が張りつめたままだし、鳥肌が立って仕方ないし、暑い日なのに局地的に僕だけ一気に気温が下がったみたいだったよ。


 「UFOで間違いないですよね?」と大声で問いかけたら、オレンジの物体がフォン、フォン、フォン、フォンと短い間隔で点滅し出すから本気でたまげたよ!


 「これは面白くなってまいりましたぁっ!! まさに人生の一大事だね!」と僕は叫んでから急いで机の中をひっくり返して、懐かしのリコーダーを見付け出し、窓に駆け寄り、深呼吸をしてからリコーダーであれを吹いたんだよ。映画「未知との遭遇」のクライマックスで鳴り響く、鼻唄混じりで作ったようなチープな曲「♪ ぱぁん・ぱぁん・ぱぁん・ぱぁん・ぱぁーん♪」という惚けたような愛嬌のある可愛いメロディーをさ。

 

 僕はオレンジの物体に目掛けて、何度も「♪ ぱぁん・ぱぁん・ぱぁん・ぱぁん・ぱぁーん♪」と7回くらい吹いたんだ。そしたらさぁ、オレンジの物体が音に反応して青に変わったんだよ!」


 「アーオッ! フォーゥ! ポォーゥ!」と突然、亜美が大声でマイケル・ジャクソンの真似をしたので、皆が驚いて亜美を見た。


 「亜美、話の邪魔をするなよな!」と憲二が丸めたティッシュペーパーを亜美に向かって投げた。


 「どうしてもマイケルを真似たくて。あはははは」と亜美はティッシュで鼻をかみながら笑った。


 「続けてよ」と美絵ちゃんが優しく話を促した。


 「僕は青色の謎の飛行物体に向けて「えー、続きましては…、名曲『エーデルワイス』です。映画『サウンド・オブ・ミュージック』でも印象的なシーンで流れましたよね? ご覧になりましたか?」と大声でUFOに言ってから気合いを入れて吹いたんだ。

 

 小学生の頃の得意な曲だったから自信はあったさ。あったけどね、緊張もあったし、久々だしで、指が全然動かないんだよ。焦ったけど、なんとか吹き終えたんだ。そしたら…」


 「そしたら!?」と皆がハモって言った。


 「UFOの色が赤に変わり出して、激しく点滅して、怒っているように見えるんだよ。後半の部分を、トチったから、やり直しを命じられたんだと思う。


 しかたなく、2回目を上手く吹いたら、UFO、謎の物体は、また元の青色に戻ったんだよ」と僕は腕を組んで思い出しながら話した。

 

 「随分、厳しい審査だったんだね。竣、確か、小学生の頃にいたさ、音楽の高見先生も厳しかったよな」と憲二が顎をさすりながら言った。


 「あぁ。両方の鼻の穴から鼻毛がたくさん出ていた先生だろう?」僕は自分の鼻を指差して言った。


 「そうそう。鼻毛に鼻くそが付いていたよな」と憲二が薄ら笑いを浮かべて言った。


 「シーッ、憲二、静かにして。話を続けてよ」と今度は梨香が遮るように言った。


 「僕はUFOを静かに見つめていたら、UFOは音もなくスーッと上に上がっていったんだ。『かなり上空へ行ったなぁ』と思っていたら、突然、電気を消すみたいにパッと消えていなくなってしまったんだよ」と僕は亜美から貸してもらった扇子を扇ぎながら話した。

 

 「未確認飛行物体が確認できた時点で確認飛行物体となるわけですから、UFOではなくて、IFOと呼ぶようになるそうですよ」と瀬都子は言って眼鏡を外し、目を擦ると頭を強めに掻いた。

 

 「へぇー、なるほどね。そうなんだ。それは知らなかったなぁ」と美絵ちゃんは感心しながら瀬都子に笑いかけた。

 

 「まだ話があるんだよ」と僕はわざと声を低くして言った。

 

 「ウソ~ッ!?」と亜美がおどけながら言ったが、瞳が(少し右目が充血していたけどね)真剣だった。

 

 「その日の晩、夜中の2時頃だと思う。急に目が覚めたんだ。何気なく窓を見ると、カーテン越しに人影が見えたんだ。『和雄爺ちゃんかな?』と僕は寝ぼけ半分で思ったんだ。

 

 窓の鍵が閉まっているので、開けてあげようと眠たい目を擦りながら窓に近づいたら、人影がガチャガチャと動いて窓を開けようとしたんだよ。

 

 『これは爺ちゃんじゃないな』と分かったので『お母さんに言おう!』と思い忍び足で自分の部屋の扉にゆっくりと向かったんだ。

 

 そしたらさ、今度は窓を小さく「コン、コン」とノックをする音がしてきたんだよ。


 僕はカーテンのわずかな隙間から窓の外の様子を見ようと戻ってみた。

 

 少しだけ開いていた隙間から見えたのは、見たことのない男が1人で立っていたんだよ」

 

 「うわ〜!! こわっ!!」と皆が口々に言い出して腰を浮かした。

 

 「竣、窓を開けるな!」と話に引き込まれた様子の亜美が、自分の顔に強く扇子を扇いで言った。

 

 「竣くん、絶対に夜間にありえない話よ」と美絵ちゃんは体育座りで縮こまって言った。

 

 「実は皆、僕はその男の人を携帯の動画で録画したんだよ。録画時間は1分くらいだったと思う」


 「竣、深夜じゃ暗くて、男の人相がよく分からないだろう?」憲二が手を挙げて質問をしてきた。

 

 「庭には防犯のために不審者が来たらライトが点くようになっているんだ」

 

 「あっ、そうか。なるほどね!」憲二は納得をして静かに微笑んだ。

 

 「後で動画を見せるけどさ。男は、かなり切羽詰まった顔つきをしていた。

 

 また窓を「コン、コン」と叩くから怖くてさ。男が何かぶつぶつ独り言を言っているんだよ。耳をすましてみたけど分からなかった。

 

 もう一度、窓を「コン、コン」と叩くからさ、僕も少し腹が立ってきてさ、恐怖もあったから大声で「入っています!!」と怒鳴ったんだ。


 男はビクッと体を震わせてから、庭の方に行き、しゃがんで野グソをし出したんだよ!

 

 僕は完全にキレてさ、窓を開けて「おい! あんた、警察を呼ぶよ!!」と怒鳴ったんだ。そしたら、男は立ち上がって愛想笑いを浮かべて「やっぱりさ、2回目の方が良かったね!」と言って僕の横を指差したんだよ。

 

 釣られて横を見ると月が見たこともないくらい、とても大きくて綺麗だった。

 

 僕は視線を男に戻すと、男は跡形もなく消えていたんだ。2秒くらい目を離した隙にね。

 

 動作による音、足音を立てずにだよ。僕は出来立てホヤホヤの野グソを証拠として残すために写真か録画をしてから、明日の朝一番に交番へ届け出ようと庭に出たんだ。


 なかったんだよ。野グソがね。「おかしいなぁ?」としばらく周りを探してみたんだけども、野グソはなかったんだ」

 

 「竣、そいつは、一体誰なんだ?」と憲二が躊躇いがちに言った。

 

 「竣、その男は、最初から野グソをしていなかったんじゃないの?」と梨香が眉間にシワを寄せて言った。その顔が一瞬だけ、ジーン・ハックマンに似ていた。

 

 「『2回目が良かったね!』って? 『エーデルワイス』のことなんじゃないの?」と美絵ちゃんが閃いたような顔をして言った。

 

 「あーっ! そうかー! そうなるよねぇ?」と亜美が言って、慌てて立ち上がると、体を2回転させた。

 

 「まさしく、宇宙人…、かもしれないですね」と瀬都子は言い、眼鏡を取って目頭を押さえると、目を閉じたままで唸り続けた。

 

 「今となっては、オレンジ色の物体、点滅、青や赤に変化する色、謎の男などを照らし合わせて考えてみると、そうだね、宇宙人なのかもしれないね」と僕は言った後、あの日の恐怖が蘇ってきた。

 

 『2回目は良かったね!』と男が言った意味が、確かに『エーデルワイスの事だ!』と改めて今頃になって気付いたからだった。

 

 「動画を見る? 誰か、男の顔に見覚えはある?」と僕は皆を手招いてから動画を見せた。

 

 皆は顔を寄せて食い入るように動画を見ていた。

 

 お互いの息が顔に掛かっていた。

 

 1分間、誰もが無言で真剣に見つめていた。

 動画が終了した。全員「知らないなぁ、見たことがない人だった」と言わんばかりに首を横に振っていた。誰も一言も話さないで宙を見つめていた。

 

 「動画を消した方が良いと思う方は、手をあげてください」と僕が言うと、全員一致で手をあげた。

 皆、僕のために力になれなかったのが悔しかったのか、途方に暮れたような寂しそうな顔をしていた。

 

 

 

  

つづく

ありがとうございました!また読んでね!!

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