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フォーエバー・ヤング( 青春の痛み)

竣は『前に前に進んでいくしかない。自分で出来る限り、精一杯に努力を重ねていき、全力を注がなくてはならない。人生は短いんだ。人生を出し惜しみしてはいけないよ!肉体は老いても魂や心は若いままでいられる。青春は大人になっても続けていくことが出来るんだよ』と思っていた。

 亜美の部屋では梨香と瀬都子が本を読んでいたが亜美の姿がなかった。


 「あれ!? 亜美は?」と僕は部屋を見回して言った。


「【2+4】ニタシ(近所にある24時間のスーパー)に買い物だよ」梨香はゴマ味煎餅の袋を開けて匂いを嗅ぎながら言った。

 

 梨香は亜美のベッドでうつ伏せになって、ゴマ味煎餅を二枚重ねにして食べてながら足をバタつかせて本を読んでいた。

 

 「梨香、なんの本を読んでいるんだい?」憲二は梨香の傍に寄って行き、自分の肩を掻きながら言った。


 「ケン・グリムウッドの『リプレイ』だよ」と梨香は起き上がって本の表紙を見せた。


 「名作だね。僕は3回読んだよ。瀬都子は?」と僕はゴマ味煎餅を1枚貰ってから言った。


 「私はウィリアム・バーストが書いた『ジェームス・ディーン』という伝説の本です」と瀬都子は表紙の格好いいジミーの写真を見せてくれた。

 

 「僕も昔に読んだけど珍しい本だね! 亜美の本? それとも瀬都子の本?」と僕は嬉しくなって聞いた。

 

 「実は公園のベンチに置いてあったんです。私は2時間ベンチに座って文庫本を読みながら、この本の持ち主が取りに戻るのを、ずっと待っていたのですが、誰も戻ってこなくて…。

 風に捲られたページを見ているうちに、本がなんだか寂しそうで可愛そうになってきたので、そのまま持ってきてしまったというわけなのです」と瀬都子は眼鏡を上げながら言った。

 

 「その本は名作だよ。嘘や噂による数々のジェームス・ディーン神話がこの世には存在するけれどもね、この本だけはジミーの真実の姿を描いていると思う。なぜならね、ウィリアム・バーストはジミーの大学時代からの親友だからね。その本は青春の痛みを感じさせる小説だったのを覚えている。瀬都子、クライマックスは涙が溢れ出たよ」

 

 「へぇーっ、そうなんですか? 道理で『素朴で優しい文章だなぁ〜』と思いながら本を読んでいました」と瀬都子は感心しながら言った。

 

 僕はジェームス・ディーンが好きだ。彼を越える俳優は絶対に現れない。ジミーの死後、多くの俳優が彼の後継者に名を列ねていたが、誰一人として、彼に近づけたり越えたりすることは出来なかった。

 

 『僕が本当に共感する俳優はジェームス・ディーンだけなんだ』とアル・パチーノは言っていた。 

 

 ある俳優は「ジェームス・ディーンは演技を最高レベルまで高めて決して消えない魅力がある役を作った」と言っていた。


 僕はジェームス・ディーンを知り『本物は凄い!』と思ったのは3年前の14歳の時に見た「エデンの東」だった。

 

 アドリブを交えて演技をするジミーがあまりにも凄すぎて僕は震えていた。ジミーはとてつもなかった。父親に泣きながら抱きつくシーンは何度見ても胸が引き裂かれてしまう。

 

 没後63年になるが、今でも現役として通じるだけの才能と演技力があると僕は確信しているし『永遠に生き残るのはジミーだけ』と思っている。 

 

 個人的な意見だが、ジミーに近い位置にいる俳優がただ1人だけいる。


 初めて、その俳優を見た時「あっ! これはジェームス・ディーンを意識しているみたいだな!」と僕は感じていた。

 誰かは、言いたくない。もちろん、今も現役で大活躍をしている素晴らしい俳優だ。

 

 ある有名な映画評論家がその俳優を見てこう言っていた。

 

 「彼はジェームス・ディーンの真似をしているね」と書いてある文章を見た時には『やっぱりな』と思ったものだった。

 

 ジェームス・ディーンがなぜ偉大なのかを決定的な事を1つ言わせてもらうとね「ジェームス・ディーンがいなければ、ビートルズは存在しなかった」という言葉に尽きるだろうと思う。ジョン・レノンの言葉だ。

 

 「お待たせー!」亜美が部屋に戻ってきた。両手にぶら下げた袋の中には、お菓子やら飲み物がたくさんあった。

 

 「竣、警察署はどうだったの?」

 

 「亜美、喉が乾いてさ。飲み物を頂けるとありがたいんだ。話しはその後で」と僕はティッシュで汗を拭きながら言った。

 

 僕はレモンティーを飲み干した後に、僕と美絵ちゃんと憲二は亜美たちに経緯を詳しく話して聞かせた。

 

 亜美は泣きそうになっていた。梨香は手を握り締めて聞いていた。瀬都子は目を閉じて腕を組みながら聞いていた。瀬都子は時おり瞼を引くつかせていた。 

 

 「美絵ちゃん、大変な思いをしたけどさ、もう大丈夫よ! 竣、よく美絵ちゃんを守ったね! 偉いよ!」と亜美は美絵ちゃんの手を両手で擦りながら言った。

 

 僕らは、たくさん、くだらない話ができるほどまでに、すっかりリラックスをしていた。

 

 夕方になるにつれて、気持ちも穏やかになってきった。

 

 「おい、竣、礼のお化けの件だけどさ、どうするよ? 今晩、肝試しに行かないのか?」と憲二はうちわを扇ぎながら言った。

 

 「怖いから行きたくないね」と僕は即答えた。

 

 美絵ちゃんは僕を見てクスッと笑った。

 

 「私は行くよ〜」と亜美は手を真っ直ぐに挙げた。

 

 「わたしもーぉ♪」と梨香も言って手を振りながらピースをした。

 

 瀬都子も頷いてから「私も参加をしますっ!」と亜美の部屋の壁に貼ってあるジェームス・ディーンの写真に向かって言った。

 

 「私もおばけに会いたいし、見てみたいから行ってみようかなぁ?」と美絵ちゃんまでワクワクと目を輝かせて言う始末。

 

 「俺も行ってみたい! 死んだ爺ちゃんに、ぜひ会いたいね!」と憲二は手を合わせて「南無阿弥陀仏」と唱えた。

 

 「竣、ということになりました! 行こうよぉ!」と亜美は笑いながら僕の肩をバシバシ叩いてくる。痛い。


 「行かないよ! 僕がおばけに取り憑かれたら責任持てるのかよ?」と僕は強く主張して耳を塞いだ。

 

 「竣くん、せっかくなんだからさ、皆で夏の思い出を作りをしようよ」と美絵ちゃんが優しく言った。

 

 「う〜ん…。そ、そ、そうだね…。美絵ちゃんが言うなら仕方がない」と僕はガックリしながら返事をした。

 

 「今は、午後の5時30分だからさ、8時には出発しようぜ」と憲二は時計を見ながら言った。

 

 「その前にさ、気分を盛り上げるために、1人ずつ怖い話や不思議な体験談について話していこうよ!」と梨香が薄気味悪い顔を作って言った。

 

 「良いよ〜!」と皆は手を叩いて声をあげたが、その賛成の声の中に僕の声は含まれていなかった。

 

 

 

 

つづく

投稿が続いているので、「飛ばしすぎだ!」と言われてしまいました(笑)時間の隙間を見つけつつ、眠たい目を擦りつつ、大丈夫!と自分に言い聞かせて書いております。また、よろしくお願いいたします!どうもありがとうございました。

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