目撃者を探せ
テンポよく書いています✨
小説って素晴らしいね!
冴子さんが去った後、入れ替わるようにヨガの達人、頭麗痔蘭さんが覚束ない足取りでタンクトップを取りに戻って来た。
「やっばしな。やっばし、ここにタンクトップがあると思ったんだわぁ。アブねぇいところだったわぁ。もう少しで家から追い出されるところだったわぁ。助かった。じゃあね、バイバイ」と頭麗痔蘭さんは言ってタンクトップを着た。全く目が笑っていない笑顔を見せて、ゆっくりと歩く亀よりも100倍も遅く歩いた。時おり僕らを見て手を振り、また歩いたかと思ったら、再び立ち止まって、僕らを、じっ~と見てから弱々しく手を振った。家に帰りたくないのだろう。たぶん、こっぴどく奥さんに叱られると思われるね。恐妻家でも仲良く暮らして欲しいな。あんだけ凄いヨガが出来るんだから自分に自信を持って欲しいよね。
南さんは「竣くん、帰ろうよ」と言って僕らは家に戻った。
僕と南さんは帰宅してから夕方近くまで足跡と謎の文字について話し合っていた。
南さんは話している途中で、迷いはじめたらしく、「イタズラかもしれない」と南さんは言い出したが、2日前の午前2時の夜更けに砂浜にいた女の子を目撃した人物が2人もいる。当の南さんと恐妻家のヨガの達人、頭麗痔蘭さんだ。
冴子さんは午前4時頃に足跡と謎の文字を見ているが女の子は見ていない。2時から4時の間に海水による文字の消失が進んだと推測される。午前2時から3時の間なら文字が残っている可能性が少なからずあるし高い。わずか1時間の間に他の目撃者がいたなら幸運な事だけれども、今のところは何とも言えないし分からないでいる。「誰か、他に見た者はいないものかな? 南さん、24時間営業のお店とかはありますか?」と僕は南さんに言った。
「お日様島は、あまり24時間営業のお店はないからなぁ。散歩しているお年寄りか、ランニング等のスポーツを嗜む人がいたら良いけどもね」と南さんは言ってお日様島のマップやガイドブックをテーブルの引き出しから取り出した。
確かにガイドブックには、数点の24時間営業のお店が掲載されていた。レストラン、本屋さん、ガソリンスタンド、他にも細かいお店はあるが数は少なかった。南さんの家からも距離があるし、海辺、砂浜までの距離が5キロから10キロもあった。この距離から午前2時~3時の1時間に海に来る人はいないだろう。考えられないと思うね。
「南さんの近所には頭麗痔蘭さんと冴子さんが海辺の家に住んでいるんですね? 他にも住んでいる方はいますか?」
「かなり気難しいおばさんが向こう側にいるね。関わりはほとんどないから詳しくは知らないんだ」と南さんは素っ気なく冷たい態度で言った。
「南さん、そのおばさんの名前は?」
「原田満美子さんだったかな、真由子さんだったかな? 覚えていないわ」
「原田さんは、今、訪ねたら居ますかね?」
「分からないわ」
「南さんは自宅に居てください。僕が様子を見に行ってきます。原田さんの住所は?」
「教えても良いけどさ、気を付けてよ。原田さんは癇癪もあるからね」と南さんは言ってメモに住所を書いてくれた。
「ちょっと先に行った所だからすぐ分かるよ。竣くん、気を付けてね!」と南さんは心配そうに爪を噛みながら言った。爪を噛むのは、余程、心理的にストレスがある証拠だ。
「南さん、大丈夫ですよ。行ってきます! ありがとう」と僕は言って玄関を出た。僕はバンガローに似た雰囲気の南さんの家を仰ぎ見ながら、落ち着いた静かな気持ちで道を歩いた。
ありがとうございました!




