表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/214

後ろ姿

快調に執筆しています✨✨✨✨✨

快調です。


 僕は地上に出てから直ぐに異変を感じたので、素早く落ちた穴の側にある草むらにしゃがんで隠れた。

 

 10メートル先にアイドリングをしたままの白い車が停まっていてボンネットに座ってタバコを吸う男の後ろ姿があった。僕には全く気付いていないみたいだった。僕は辺りを見た。足元に柔らかい土と泥があった。僕は泥を掴んで手のひらに広げると顔全体に塗りたくった。闇に紛れ込んでカモフラージュするためにだ。

 

 僕の思考に揺れが生じていた。


 深夜3時の深い空気に呑み込まれた深紅のバラは神経質に僕を見ていた。


 小さなざわめきを感じ取ったヒマワリが小刻みに震えて泣いていた。

 

 夜空の星たちが幾年の記憶を投げ捨てていくのが見える。

 

 限定的に研ぎ澄まされた視先から光が放たれていた。

 

 目映い光の束となって僕の無意識に注いでいくばかりだ。

 

 僕は雑念と差し迫った危険を回避するために、草むらに朝まで留まるべきかどうするか悩んでいたら、ボンネットに座っていた男に動きがあった。

 

 なぜか男は白い車の周りを回り始めた。ブツブツと独り言を呟いているのか、愚痴を言っているのかは分からないが、しきりに口を動かしていた。男の右手にあるタバコの火は消えていた。男は時計を見た後、地面にあった石を拾って遠くに投げた。苛立っているようだ。タイヤを蹴り上げてドアを開けたまま運転席に体を投げるように座り込んだ。

 

 僕は空腹と睡魔とカラッシュシタツンの辛さのせいで、いよいよエネルギーが2ポイントくらいになっていた。ティーンエイジャーの体力は無敵だけども、今回ばかりは激烈に疲労困憊だ。ただ、ある種の興奮状態にいるために何とか意識を保っていた。

 

 僕はスマホの電源をオフにした。

 

 おや!? 男が運転席から出て、こちらに向かってきた。正確には僕が落ちた穴の方向に歩いてきた。

 

 僕は、うつ伏せの状態で顔が上げられず、砂利の上を歩く男の足音に集中して耳を澄ませた。男は立ち止まった。僕は静かに体を上げて男の様子を見た。僕と男の距離は約2メートルだ。

 

 「チッ、約束の30分が過ぎた。豆スピンの奴、本当に人魚を捕まえるんだろうな。嘘なら直ぐに殺してやる」と男は言って穴の中を覗いていた。

 

 今までにない危険な大人だ。もしかして、刺酢股源五郎か? 全ての運気やエネルギー、時には命さも奪いかねない悪運の持ち主には絶対に関わらない方がいい。呪いを宿す物には決して近づくな、だ。僕は身動きせずに草むらの隙間から男の様子を窺っていた。

 

 男は身長185センチくらい、筋肉質で赤く染めた坊主頭だった。鷲鼻と鋭い目に意思の強さを感じた。強情なタイプ、唯我独尊的な性格に思えた。全体的に不吉な佇まいをしている。

 

 男は鼻をヒクつかせて辺りの匂いを嗅ぎ始めた。

 

 しまった、カラッシュシタツンの残り香に反応しているようだ。ゆっくりと僕が隠れている場所まで歩いてきた。

 

 ヤバい。辛さと緊張のために呼吸が複雑な荒さを出していた。こうなったら、こうするしかない。

 

 「にゃお~ん、にゃあ、にゃあ、にゃあ。にゃお~ん」と僕は猫ちゃんの鳴き真似をした。

 

 男は飛び退いて目を丸くすると地面に身を屈めて石を手に取った。

 

 「猫!? 俺は猫アレルギーなんだ、よっ!!」と男は怒鳴って僕が隠れている草むらに思いっきり石を投げてきた。

 

 僕の頭に石が命中して、意識が飛び、そのまま視界が暗転しそうになったが、必死に耐えて猫ちゃんの鳴き真似を続けた。

 

 「ごろにゃ~ご、ごろにゃ~ご、みゃあ、みゃあ、みゃあ、みゃあ、ごろにゃ~ご」と僕は猫ちゃんの鳴き声を真似していたが目の前が真っ赤に染まっていった。どうやら頭頂か額が割れて血が流れているようだ。

 

 男は僕のいる場所へ、ゆっくりと近付いてくる。

 

 『クソッ、頭が痛い。何とかしないとな』僕は何となく後ろを振り向いた。まばらな浅い泥沼があった。

 

 『飛び込むしかない!』と僕は考えて体操の後転をしながら猫ちゃんの鳴き真似を連発した。

 

 「ごろにゃ~、ごろにゃ~、にゃんきち、ごろにゃ~ん、ごろきち、ごろにゃ~ご」と鳴き声を上げまくった。

 

 「あっちいけ! 殺してやるぞ! 猫なんて滅べば良いんだ!」と男は怒鳴りながら石を投げまくってきた。

 

 石が僕の背中や腰やお尻に当たる度に「ごろにゃ~ご!!」と僕は大きな悲鳴を上げた。

 

 『あの野郎!』と僕は怒りに震えていた。男は何かを吐き捨てると車の元へと戻っていった。僕の体は泥まみれになっていた。言葉は何も浮かばなかった。

ありがとうございました!また読みに来てね✨ポイントやブクマ、感想をくれたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ