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食べれるもんなら食べてみそ

2021年新年明けましておめでとうございます!新年、投稿の第1弾は、もちろん、代表作です!

今年も宜しくお願い致します✨

 僕は体がビクンと大きく動いて目覚めた。

 

 たまにビクンと反射するみたいに体が飛び出すように動く原因はなんだろうね? 気味の悪い身体的反射だよな。疲労と関係があるのかもな。

 

 それにしてもだ、腹が減ってどうにもならんよ。僕はスマホの時計を見た。時刻は深夜2時だった。充電の残りは10%になっていた。何で減るのかは分からない。癖でコンセントを探してみたが、ない。実にマズイ状況だ。腹が減りすぎて頭がスムーズに回わってくれない。

 

 上を見上げて綺麗な月灯りを、しばらく黙って見とれていると、急に腹が立ってきたので横の壁を殴った。柔くて脆すぎる壁は50センチほどの丸い穴が空いた。穴の向こう側は開けたような感じがする。洞窟へと続いているようだ。土の匂いと一緒に冷たい空気が一気に体を突き抜けてきた。僕は更に壁を殴って体が入れるほどの大きさに広げた。

 

 「行ける!」と僕は言って体を屈めて穴の中を進んでいった。

 

 僅かなスマホの光を頼りに石だらけの地面をほふく前進しながら10メートルほど進んで行くと少しだけ開けた場所に出れた。スペースは狭いが鍾乳洞だと分かった。氷柱の鍾乳石が天井に広がっていた。僕は立ち上がって体に付いたホコリを振り払うと、ヤケクソ気味のまま歩いた。鍾乳洞に来たのは初めてだった。

 

 僕は立ち止まって後ろを見て考えた。『迷子になるのはヤバイから元の来た道に戻る』と判断して引き返すことにした。思いの外冷えていた。冷えは体力を奪うからね。スマホは7%になっていた。

 

 「お~い!」と僕が落ちた穴の方角から声が聞こえてきた。

 

 「おい! ここにいる! 助けてくれ!」と僕は叫んだ。完全に焦って泡食っていた。僕は体を地面に着けてほふく前進をした。早く戻らねば。高速で10メートル先までのほふく前進をした。肘が痛いし、膝頭も痛い。

 

 殴って開けた穴の側に戻ると体を起こした。


 「お~い! 誰か返事したけど大丈夫かー?」と更に声が聞こえてきた。

 

 「何とか大丈夫です」とようやく安堵すると上を見上げた。

 

 「どうしたの?」と見知らぬオッサンが顔を出していた。


 「誤って踏み外して落ちたんです」と僕は言った。

 

 「ふ~ん」とオッサンは言って着ていた長袖のシャツを脱いだ。

 

 「今、助けてやる。俺のシャツを掴めるか?」とオッサンは言って長袖のシャツを垂らした。

 

 「底まで7メートルもあるんで無理です」と僕は言った。

 

 「ふ~ん。ロープを持ってきてやるから待ってろよ」とオッサンは言って立ち上がると「これ食って待ってろよ」と言ってカラッシュシタツンの袋を投げ入れてくれた。

 

 なぜ、ここにきて激辛ポテトチップスのカラッシュシタツンなのかは分からない。何も食べないよりはマシなので食べるしかない。背に腹は代えられない。僕は辛さのあまり泣きながらカラッシュシタツンを食べ始めた。

 

 袋をよく見たら限定生産のカラッシュシタツンみたいで『辛さ30%アップよん! 食べれるもんなら食べてみそ!』と書いてあった。僕は泣きながらカラッシュシタツンを食べた。いやいや腹に入れているのが辛いしバカみたいに辛くて泣いているのだ。味もクソもない。ただただ辛いポテトチップスを水なしで食べているのだ。

 

 僕は舌を麻痺させながら食べるコツをマスターし始めていた。ひたすら噛み砕いて味わう事なく食道に流し込むのがコツだ。そんなことしたら喉が渇くに決まっている。僕はほふく前進をして鍾乳洞に戻る事にした。カラッシュシタツンのお陰で寒さはない。全裸になりたいくらい暑い。

 

 鍾乳洞の奥に行けば透明度の高い美しい女性が美しい水を飲んでいる湖があるに違いない。そんなファンタスティックが妄想が頭の中を支配していた。一刻も早く、このバカみたいな辛さから早く逃れたい。

 

 僕は腰を屈めて鍾乳洞の奥へ奥へと突き進んだ。無鉄砲な行動力はカラッシュシタツンの辛さからきている。顔中に汗が吹き出ているし、体の水分が急速に失っているのが分かる。

 

 実に懐かしいね。ボクシングの試合前は毎回こんな感じでしんどかった。減量、激しいボクシングのトレーニング、ランニング、サウナ、懐かしいけども、あの時は辛くなかったから耐えられた。今はバカみたいな辛さによる脱水状態なので苛つきまくっていた。

 

 あのオッサン、本気で長袖のシャツを垂らして助け出せると思ったのか、と思うと更に腹が立ってきた。たぶんロープも短いロープかもしれないと先読みをしていたら、もっと腹が立ってきた。大体、何であんな所に7メートルの落とし穴があるんだ? 気付かないで落ちた自分に、もっと腹が立ってきた。

 

 僕はフーフー言いながら舌を出して歩いた。辛い。辛さが増している。カラッシュシタツンの袋を読むと激辛ではなくて超辛となっていた。

 

 「水、水くれ」とかすれた声を出して深夜2時過ぎに鍾乳洞の中をさ迷うのは75億人の人間の中で僕だけだと思う。

 

 とにかく水、水くれ。

 

 それにしてもだ、あのオッサン、なんだか怪しいな。深夜2時過ぎにカラッシュシタツンの袋を持って落とし穴を覗く人間なんてさ。

 

 「お~い! 兄ちゃんよ~、おじさんも穴に落ちたからさ~、一緒に行動しようぜ~。大丈夫、怪しくないから、おじさん、全然、怪しくないから」と後方から大きな声がしてきた。

 

 ふざけるな。怪しいに決まっているだろうが。

 

 

 

 

ありがとうございます!

また頑張って書きます。

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