僕の求めたもの
最新作は楠見オールナイト祭りを、まったりとした優しい雰囲気にしました。
「相変わらずエキセントリックなカウボーイだけどもね、検挙率が高いと思うので良い仕事をしているな。大したもんだよな」と僕は言って、ブルースハープを吹きまくりながら走り去っていくディーン・マックィーンの後ろ姿を見送った。
妙なテンションで騒ぐ会場の人々はスマホで宙ぶらりんの宝金容疑者を撮影していた。
「突き落とすなんて、衝撃的なバンジージャンプだったわね。超トラウマになりそ~う。怖~い。あらっ、この煎餅、超美味し~い。梅の味が効いてるわ。この味好き~」と最初は深刻に捉えて話した亜美だったが、手に持っていた煎餅の袋を開けて2枚重ねで食べるとトラウマは雲散した。これが女の強さだ。気持ちの進展がめちゃくちゃ早い。
「竣くん、次は何処に行こうか?」と美華は楠見オールナイト祭りのマップを広げて確認した。
「そうだな、四季ちゃんに会いたいね」と僕は懐かしい気持ちになって言った。
老舗のアイスクリーム屋さん「ファンタジー」の美人な看板娘、緒川四季ちゃん。今回、楠見オールナイト祭りに出店している。今頃、忙しく立ち回っていて大変だろうなぁ。もう少し時間を置いてから行こうかな。
「私ね、四季ちゃんのLINE知っているから送って様子を確認しようか?」と美華は言ってスマホを僕に向けた。
「美華ちゃんは四季ちゃんの友達なの?」と僕は驚いて聞いた。
「うん。前に皆で行ったシタビズミ温泉でね、四季ちゃんのLINEやメールアドレスや住所を教えてもらったのよ」美華は嬉しそうに話した。
「たまにLINEのやり取りで近況を報告し合っているよ」と美華は四季ちゃんのLINEを少しだけ見せてくれた。
「あらま、本当だ」四季ちゃんの明るくて楽しそうな文章がいっぱい並んでいた。
「チョコミントとお、ストロベリーのアイスクリームとお、あんみつを食べたいなぁ~。いやぁ~、ちょっとさ、この煎餅、マジで美味すぎるわ」と食欲旺盛な亜美は煎餅を食べながら言った。
「亜美、食べ過ぎたらダメだよ。お昼は皆でカフェ「キャッツ」で食べるんだからね」と美華は亜美に優しく注意した。妹に語り掛けるような口調だった。さすがは長女。
「はぁ~い」と亜美は素直に煎餅を自分の鞄に入れた。
これだ。僕が求めていた世界はここにあるんだ。この世界でしか生きられない。
夏の陽射しを浴びて体内にビタミンDを作って健康になって友達と遊んだり悩んだりしながら今を生きる。
辛い事があっても友達がいるだけで幸せな気持ちになっていく。愛する人たちに囲まれて生きる喜びに勝るものはない。
僕は友達の喜ぶ顔が見たいんだ。友達のためにも自分の人生を頑張りたいんだ。
友達がいると身体中にエネルギーが溢れていく。希望が生まれる。いつまでも友達を大切にしたい。
「美華ちゃん、四季ちゃんにLINEをお願い出来るかな?」と僕は手を合わせて言った。
「うん」美華はすぐさまLINEを送った。
『四季ちゃん、今から皆でファンタジーに行ってもいい?』美華
『ちょっと待っちくり~。お客様が大名行列並みに並んでいてめちゃめちゃ大変なんだわ。1時間後くらいに来てくれるかい?』四季
『四季ちゃん、分かりました。場所はどの辺にあるの?』美華
『うんとね、演劇場の側にあるよ』四季
『はい、分かりました。後でね』美華
『は~い。気を付けておいでね。待っていま~す』四季
「ということです」と美華はLINEを読みながら言った。
「じゃあ、1時間、何処か他の場所に行こう」と僕は美華と亜美を交互に見て言った。
つづく
ありがとうございました!
またね!頑張って更新します!
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