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君の名を呼ぶ、この幸せ

竣は右足を扉にぶつけた。竣は激痛に悶えながらも、美絵の優しく介抱してくれる姿に、自然と任せられて身も心もすべてを美絵に委ねていた。今までにない、穏やかな気持ちと安らぎを感じた瞬間でもあった。竣は『時よ、止まってくれ!』とこれほどまでに強く激しく願ったことはなかった。2人の心が重なっていく。今までずっと寂しくて独りぼっちだったけど、美絵にめぐり逢えて、何かが変わろうとしている、と竣は思い始めていた。今回の2人はかつてない接近中の大接近をします!お見逃しなく!恋に落ちていく、竣と美絵を暖かい目線で見守ってくださいね!

 結局、僕はケンケンをしながら亜美の部屋に入った。右足がジンジンする。小指か腫れていた。

 

 「峻くん、靴下を脱いでください」と柏木美華は屈み込んで言った。

 

 僕は片足で立って脱ごうとしたがバランスが崩れてしまい、僕の前に立っている美華の方によろめいた。 

 

 「ヤバイ!!」と僕は叫んでいた。

 

 ここで柏木美華を怪我させてしまったら僕はバンジージャンプを連続で50回落ちた後、醤油で顔を洗ってからマヨネーズで頭を洗い、わさびで歯を磨く罰を受けるしか許される道はないという覚悟でいた。

 

 「避けてください!」と僕は柏木美華に言った。

 

 「任せて! 大丈夫よーっ!!」と柏木美華は気合いを入れて言った後に、腰を屈めて踏ん張った姿勢を保ち、両腕を伸ばして倒れる寸前の僕の肩を支えた。

 

 柏木美華と至近距離。

 

 赤面した顔を見られたくない。心臓が苦しい。動悸が激しい。柏木美華の顔は肌が透き通るように白くて綺麗だった。

 

 二重瞼で睫毛も長く瞳はアーモンド型でパッチリと大きくて唇は整っていた。

 正直に言うと僕は柏木美華に、たまらなくキスがしたかった。品のある唇に触れたいと思った。本当に全身から良い匂いがして頭がクラクラしてきた。

 

 柏木美華は凛とした素敵な女性だった。仕草の1つ1つから目が離せなかった。

 

 こんなにまで美しいのに、気取った所が全然なかった。僕はこのまま時が止まれば2人で永遠を生きていけるのに、と考えていた。

 

 「足、やっぱり痛そうだね。ちょっと腫れている。亜美ちゃんに氷を貰ってくるよ。待っててね!」と柏木美華は言って急いで亜美の所に向かった。

 

 「すみません。ありがとうございます」と僕は階段を降りる柏木美華に向かって声を掛けて頭を下げて礼をした。

 

 柏木美華は直ぐに亜美と一緒に部屋へ戻ってきた。

 

 「なにしてんのよ!! 竣、大丈夫~? これはマジで痛そうなヤツだねぇ。ビニールの袋の中に氷を入れてきたから冷やして」と亜美は氷が入った袋を僕に渡して言った。

 

 亜美はコップ、飲み物、お菓子を御盆に乗せて持ってきていた。

 

 柏木美華が桶に入れた氷と白いタオルを持ってきてくれていた。

 本当にありがたい。僕のためにここまでしてくれることに心から感謝だ。

 

 僕は氷水の桶に右足を入れてから、脹ら脛にも氷袋を当てた。脹ら脛も結構痛かった。

 

 「じゃあ、お菓子を食べようよ!」と亜美が笑いながらスナック菓子の袋を破って言った。

 

 「竣、お菓子を食べて足の疲れを取ろうねっ!」と亜美が僕の右足にデコピンをして言った。

  

 「うん。そうだねっ」と僕はお菓子を食べながら言った。

 

 3人でお菓子を食べる。『おっ! 美味いな。これ夏奈子のお菓子だけどさ。まっ、良っかぁ!』と僕は思っていた。

 

 妹よ、すまんな。

 

 「竣、今日はわざわざ来てくれたのに、なんだか怪我までさせちゃって、ごめんね」と亜美がしょんぼりとして言った。

 

 「亜美、大丈夫、大丈夫だって。いやぁ、あはははは。面目ない。あははは。100パーセント、僕のせいだからさ、全然、気にすることなんかないんだよ。

 右足が扉に気付かなかったんだよ。

 右足に目があったらの話だけどね。あははは。

 ぶつけた所の小指にさ、視力のある魚の(うおのめ)が出来れば良いんだけどもね。あはははは!」と僕は笑いながら言った。

 

 「ブフッ、アハハハ!」と亜美は声を出して明るい笑顔を見せて笑った。

 

 柏木美華は優しく微笑んで僕を見つめていた。

 

 「早く良くなると良いですね」と柏木美華も心配そうに言った。


 「柏木さん、大丈夫ですよ。もう早速、治りそうですからね」と僕は言って、右足だけで立ち上がろうと腰を浮かしたが無理そうなのですぐに座った。 

 

 「竣君、お願いがあるんだけどね、私の事は柏木さんじゃなくて、美華って呼んでくださいね!」

 

 「わかりました。これからは美華ちゃんで呼びます。美華ちゃん、、、よろしくお願いしますね」

 

 「竣くん、宜しくお願い致します」と美華ちゃんは笑顔で頷いた。

 

 『美華ちゃん、、僕は心の中で何度も美絵ちゃんと君の名前を呼んでいたし叫んでいたんだよ。

 

 こんなに早くも、君の名前を呼べるなんて僕は夢でも見ているのかもしれない。君の綺麗な名前を呼べるなんて。僕は素直にとても嬉しいよ。どうも ありがとう、美華ちゃん』


『美華ちゃんと何度でも呼びたいよ。美華ちゃん、僕は君に出逢うために生まれてきたんだ。

 運命が2人を結び付けたんだ。初めて美華ちゃんに会った瞬間、何とも言えない懐かしい気持ちを強く感じていた。

 

 どう言えばいいのだろうか? 何処かでお互いを探し求めていたような気がしたんだよ。

 

 僕は美華ちゃんの愛の前で膝を着こうと決心したんだ。

 美華ちゃん、君がいて嬉しい。僕の愛しい美絵ちゃん』と僕は心の中で誓うように考え続けていた。

 

 

 

 

つづく

ありがとうございました!

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