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第30回楠見オールナイト祭り13

「バイカーズクラブ」の『angel』。殺気だった男達を見守る竣。

 「あ~ん! あ~ん! やっだぁ~、あ~ん! キャル、来てくれたのね? 私ね、凄く怖かったの~。あ~ん、嬉しいわ。ありがとうね、キャル! ウフフフ」セクシーダイナマイトでデンジャラスなお姉さんは胸を寄せ上げてお腹を引っ込めた。

 

 キャルと呼ばれた男は日本人だった。キャルは照れ臭そう笑うと、おでこを掻いてから自分の足元に目を伏せた。随分とシャイな人だ。

 

 アマゾネス並みにヤンチャなお姉さんは、上品に手で髪を解かしてから、首を一回りさせてヘアスタイルを無造作に整えるとキメ顔を作った。

 

 オッパイが88センチはあると思われるダイナマイトセクシーなお姉さんは、キャルと呼ばれた男、赤いジャケットを着たリーダーらしき(まだリーダーかどうかは判断しかねているので、もうちょっと様子を見たいんだ)男の傍に駆け寄ると、ストロベリー並みに甘くhotな女の顔を見せた。

 

 『バイカーズクラブ』、「Angel」のメンバーは相変わらずゆっくりとモヒカン男の周りを走っている。

 

  やはり、キャルと呼ばれた男は間違いなく『バイカーズクラブ』、「Angel」のリーダーであり、ダイナマイトセクシーハニーの気が強すぎるお姉さんの彼氏だとみた。 

 

 キャルは、先ほど、残り2人の水着を着たお姉さん方のうちの1人が、携帯で連絡をして呼んだ相手だ。

 

 「キャル、あの臭いデブで馬鹿なモヒカン男にナンパされてね、断ったのに、しつこいの。私、顔を何発も殴られたわ」さっきまでのお姉さんの話し方は、啖呵を切るくらい激しい口調で、周りを辟易させるほどのホラー並みに怖い声音で話していたのに……。

 一体、この変わり身の早さは何だろうか?

 

 明らかに、このお姉さん、キャルの前では、綺麗で優しくて、しっとりとした潤んだ男心をくすぐる女の声を出して話していた。

 

 キャルは目を細めて片手でお姉さんの顎を持つと赤くなっている頬を真剣に眺めた。

 

 チョコレートを口に含んでいるキャルの吐息が、お姉さんの顔に吹き掛かる。

 

 「あ~ん、いたぁ~い」お姉さんはうっとりとした目をキャルに向けて甘えた声を出していた。

 

 お姉さんはキャルに眩しい笑顔を見せた。誕生日を祝福されたように輝いている綺麗な笑顔だ。いや、今日は、本当にお姉さんの誕生日なのかもしれない。

 

 キャルはお姉さんの頬を指で撫でた。

 

 「あぁん! ウフフ」ちょっと指で触れられただけで、お姉さんは体をくねらせて顔を紅潮させていた。

 

 「茉莉(まり)、痛むか」キャルは眩しそうな瞳を浮かべると穏やかに言った。

 

 「キャル、とっても愛しているわ」と茉莉は全くチグハグな返答をした。

 

 決して家族にも友達にも見せることのない女の顔をした幸せな茉莉を、一体、誰が止めることができようか? 僕にはできない。

 

 女性というのは、愛する彼の前だけでしか本音や心をさらけ出さないという現実を知らないと痛い目に遭う。

 

 茉莉は『ゴロニャンコだにゃん。にゃんにゃん』と可愛く鳴いて、気が向いた時にだけ甘えてくる猫のタイプではなくて、オールド・イングリッシュ・シープ・ドッグのように、常に愛情を示す犬みたいに、無邪気に愛を表現する女の子だと僕は感じた。

 

 早い話、『キャルへの、一筋の愛』だ。

 

 茉莉は、自分が女だと感じられる瞬間こそが1番の幸せと思っているみたいだ。女の魅力を全開にしていて嬉しそうだった。

 

 「茉莉、アイツにやられたんだな」キャルは茉莉の茶髪の髪を撫でながら話した。キャルはモヒカン男に対して、怒りを溜めている様子はなかった。

 

 「うん、アイツよ。あのバカは、いい年こいて女を知らなさすぎの最低なクズよ」茉莉はキャルの首に抱き付きながらモヒカン男を睨んだ。

 

 「ビリー! ジョニー! 今から茉莉を病院に連れていくから後は頼む。すぐに戻るよ。ビリーはカレンをサツの方に連れていけ。亜沙美(あさみ)はここにいてくれ」キャルは、上半身、裸でライダースジャケットを着たビリーに初めて大きな声を出した。

 

 ビリーは色が薄めのサングラスを掛け、特撮ヒーロー並みに目立つベルトを真新しいジーンズに装着していた。

 

 「わかりました。任せてください」とビリーは言ってから、ハーレーのアクセルを吹かして頷いた。

 

 ジョニーはバイクを走らせながら左手を上げて了解の合図を送った。

 

 ビリーのベルトバックルはオーダーメイドで作ったような虎の顔だった。

 ビリーの乗っているハーレーには『Mother』とペイントされていた。

  

 「茉莉、後ろに乗れよ。ほら、ヘルメットを被れ」キャルは鷹をモチーフにした女性サイズのシルバー色のヘルメットを手渡した。

 

 キャルの背中をしっかりと抱きついている茉莉はニヤけ顔で喜びを噛み締めていた。

 

 茉莉の笑顔からは、遠出のピクニックかデート、または旅行へ行くみたいな印象で溢れていた。いや、率直に言って、内心、そう思っているはずた。

 

 「おい、デブのモヒカン野郎。俺の女によくも手を出したな。お前はDIEだ」 

 キャルは顔色1つ変えないでモヒカン男を見据えていた。

 

 キャルはアクセルを強烈に吹かすと勢いよくモヒカン男に向かってバイクを走らせた。

 

 モヒカン男は顔を歪めて撥ね飛ばされる寸前で、間一髪、「うわあああー」と叫びながら体を横に転がせて避けた。

 

 キャルは排気ガスを煙幕のように体とバイクを隠して、轟音と共に跡形もなく消え去った。

 

 黙ってキャルを見送ったビリーは水着姿の2人組のお姉さんの傍にバイクを寄せた。

 

 「カレン、早く後ろに乗れよ。亜沙美はここにいて待ってろ」スマホで男女の大乱闘を撮影していたお姉さんことカレンは足早にビリーの後部座席に座った。

 

 亜沙美は腕を組んでモヒカン男にガンを飛ばしていた。

 

 「ジョニー、カレンを警察に連れていくから後はヨロシクな。俺より早めにリーダーが戻ってきたら、俺は言われた通りに『警察に行った』と伝えておけよ」とビリーは、バイクを降りてモヒカン男の側を行ったり来たりしているジョニーに話した。

 

 「分かった」ジョニーは長髪で狂犬並みに鋭い大きな目をしていた。

 右手の全部の指にはドクロの指輪をはめていた。

 年期のある色の剥げたブーツがジョニーのヤバさを醸し出していた。

 ジョニーは器用にヌンチャクを振り回していた。

 

 残り17人、『バイカーズクラブ』のメンバー達は

モヒカン男の周りをゆっくりと走り続けていた。 

 

  ビリーはモヒカン男を睨むと、カレンに「ありがとう」と言ってから、ポケットティッシュを1枚貰い、鼻を噛んでライダースジャケットの胸ポケットに入れた。 

  

 ビリーがバイクで走り去った後も、ジョニーは変わらずに、ひたすらヌンチャクを振り回していた。

 

 2台のバイクが停まり厳つい男達が降りてきた。

 

 2人はジョニーと合流して、モヒカン男の元に歩いていくと、逃がさないようするために、トライアングルにして囲んだ。

 

 至近距離で囲まれているモヒカン男は萎縮して、マッサージ機に乗っているみたいに体が震えていた。

 

 野次馬が集まり人で膨れ上がっていた。

 野次馬たちは、

 

 「やっちゃえ」

 「ぶっ飛ばせ」 

 「痛めつけろ」

 

 と大声で喚いたり、けしかけたりしていた。

 

 『バイカーズクラブ』の「Angel」はその言葉に反応をしないで無視をしていた。

 

 「どけろよ」モヒカン男は野次馬たちの視線を気にして、ビビりながらも囲んでいる3人に言った。

 

 「……」3人の男達は無言だった。

 

 3人の男達が何も話さないことを『奴等は俺を怖がって手を出せないんだな。バイク野郎め!』と勘違いをしたモヒカン男は、続けざまに威勢のいい事を言って自分を大きく見せたがっていた。

 

 「喧嘩か? えっ? どうなんだよ? 俺と殴り合うのか? やるのか?」デブのモヒカン男はジョニーに挑発をしてファイティングポーズを出すと殴る真似をした。

 

 「なんだとデブ!? 今から外出して女をナンパしに行くだと? テメーは、今、外にいるだろうがよ」ジョニーは理解の範疇を越えた返事をした。

 モヒカン男は驚いて言葉を返せずにいた。

 

 「ジョニー、絡むな。やめとけよ」仲間がジョニーの肩に手を置いて、なだめた。

 

 「なに? デブにヤラれた? 俺が仲間の仇を取ってやるぜ」狂犬ジョニーは全く成立しない会話をしていた。

 

 「危ない! この野郎、仲間に手を出すな!」とジョニーは両手を広げて、隣にいる2人の仲間の前に立ちはだかって怒鳴ると、デブのモヒカン男に足払いをして倒した。

 

 念のための確認だけど、モヒカン男は一切手を出していなかったが、ジョニーにファイティングポーズを取って殴る真似をしたことだけは、後のためにもお忘れなく。

 

 「このデブ野郎、ナメやがって。いきなり俺に襲い掛かって来ようとしたぜ。このデブのモヒカン野郎は頭がイカれているんだな」とジョニーは先手必勝の正当防衛を周りに聞こえるように主張したが、誰がどう見てもだ、先走りし過ぎていた。

 

 ジョニーは倒れているモヒカン男の右足をアキレス腱固めで締め上げていた。

 

 モヒカン男は狂気に満ちた怒りのジョニーにタップをしたが、技を解かれずにいた。モヒカン男は怯えて呻き声を出した。

 

 『バイカーズクラブ』「Angel」のメンバーはこの状況を見て笑っていた。

 

 「おい、モヒカン男、逃げるなよ! 何故、逃げようとするんだ? 逃げるんじゃねぇよ! 逃げるな。テメーが悪いんだからな」アキレス腱固めから4の字固めに技を切り変えたジョニーは、勝手に独りで怒鳴り散らしていた。

 

 モヒカン男は血相を変えて必死にジョニーに「ごめんなさい、ごめんなさい、すみません、すみません」と泣きながらタップを繰り返していた。

 

 ジョニーは加減を知らないために相手に技が決まりすぎていた。モヒカン野郎は白目を向いてヨダレが出ていた。

 

 ジョニーはキャルとビリーが戻ってくる30分間のあいだ、ずっと4の字固めをしていた。

 

 ジョニーの技を解いたのはビリーとカレンが連れてきた警察官3人だった。

 

 キレまくっているジョニーに対して、警察官による必死の説得で、ようやく30分後に技は解除された。ジョニーはモヒカン野郎に60分間も4の字固めをしていた。

 

 少し落ち着いたジョニーは「女や子供に暴力を振るう奴は必ず俺が殺る」と言い続けてヌンチャクを振り回していた。

 

 

 

 

つづく

ありがとうございました!祭りは楽しいよ!


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