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お家に帰ろうよ

今回は2127文字です。凄く短いお話になりました。シタビズミ温泉の本当に本当のおしまい編です(笑)それにしても、暑いねぇ〜。夏ですなぁー。

 「ねぇ、ねぇ。ちょっと瀬都子。あんたさっきから何してんの?」亜美は瀬都子とディーン・マックィーンが、にらめっこをしているように見えたので、瀬都子の眼鏡に息を吹き掛けて曇らせた。


 「えっ? あははは。亜美ちゃん、違う、違うよ。別に気になっていないからさ。初対面だしさ。全然、気なってはいないけども、亜美ちゃん、少しだけ胸がツーンとするのは何故だと思う?」と瀬都子は曇った眼鏡を拭かないで、左側から声を掛けた亜美とは逆方向の右に向かって返事をした。


 「私はこっちだよ。梨香ちゃんはこっちにいます」と右側にいた梨香はアニメの声音を使って返事をした。


 「あっ、間違えた」瀬都子は左側に首を回して眼鏡を拭いた。


 「瀬都子、胸がツーンとしたら、それはあれでしょうが」と亜美は右手の親指を立てて「アウトでぇーす」と囁いた。


 「ア、アウト?」瀬都子も親指を立てて呟いた。


 「そう、アウト」亜美はニヤニヤしながら親指を瀬都子の鼻先に付けた。


 「ちょっと、2人とも。胸がツーンではなくて胸がキューンでしょう?」と梨香はアニメの声音を持続させて親指を美華にも見せた。


 「つまり恋に落ちたのじゃないかしら? ムフフ」と美華は瀬都子の胸に手を当てて心臓を確かめた。


 瀬都子の心臓はスタートの合図を鳴らす審判の笛を無視してフライングをしたまま全力疾走をするランナーのように早鐘を打っていた。


 「心臓が早いね。これは恋だね」と美華は腕時計を見ながら瀬都子の鼓動の様子をみていた。


 「私もそんな気がしてきました」と瀬都子は自分の左手首の脈を計って唸っていた。


 「瀬都子ちゃん、自分の気持ちに嘘をついてはいけないよ。大切な想いは大事に育てなくちゃ。これは本当に恋だと思うよ。瀬都子ちゃんの初恋なのかな?」と美華は瀬都子の気持ちを勇気づけるように優しく話した。


 「いや、初恋は小学3年生の時でしてね、クラスメートの政輝君です。サッカーが得意で左利きでした。美華ちゃん、嬉しいです。どうもありがとうね、美華ちゃん」瀬都子は美華の耳元で囁くようにお礼を伝えた。


 「ところで、竣。和雄爺ちゃんは?」母、幸子はテーブルの角に置いてある扇風機を小から強にして首振りボタンを押した。


 「和雄爺ちゃんは先に温泉から出てね、家に帰ったよ。何でも『ヤバイ、忘れるところだったぁ!! 衛星放送でポールの『ライブ・アット・アビーロード』があるからすぐ帰って見るわ。悪いけど、じゃあね、バイバーイ』とか言って興奮して叫んで帰宅したよ」


 「あっ、そう。フフフ」とスズ婆ちゃんは小さく笑って首を回した。


 「あっ、来た来た。チョコレート・パフェだよ。いただきまぁーす」緒川四季は手を合わせて食べ始めたので、皆も一斉に「いただきまぁ〜す」と手を合わせて食べた。




――――――――――――



 シタビズミ温泉の駐車場の所で解散とし、それぞれ別れることにした。


 緒川四季は連絡先を交換して、また会う約束をすると、四季のお婆ちゃんが運転する車に乗り、助手席の窓を開けて手を振りながら皆と別れた。


 「じゃあね、スズ婆ちゃん、お母さん」と竣は美華と一緒に歩いてカナリア公園の方に歩いて行った。


 「じゃあ、亜美ちゃん、一緒に帰ろうか?」小川詩音は亜美の肩に手を置いて照れくさそうに言った。

 

 「うん。いいよ」亜美は控え目な態度でいた。詩音と亜美はタオルで背中を叩き合いながら亜美の家路に向かった。


 「憲二、あのさ、近々、凄い映画が来るんだけど、知りたくない?」と梨香は憲二の白いリネンシャツの袖を引っ張りながら言った。

 

 「梨香、止めろよ。袖が伸びるって、伸びる、伸びる。ちょっと離して」と憲二の袖を摘まんだ梨香の指を振りほどこうとして、腕を上げたら「ビリッ」と嫌な音がした。


 「あ〜」憲二は慌てて袖を調べたが何処も何ともなかったので、梨香を真顔で見つめた。

 

 「ビリッ」と梨香は袖が破れた音を口真似して言っていた。


 「なんだよ、焦ったよ」


 「あはははは」梨香は憲二の焦った顔が面白かったのか、お腹を押さえて笑っていた。

 

 憲二と梨香は1枚のタオルの端を持って引っ張りながら歩いて行った。


 「お嬢さん」ディーン・マックイーンが愛馬のジョニーに股がって、白いカウボーイハットを瀬都子に手渡しながら声を掛けた。


 「はい。私に何か用なんですか?」瀬都子は、少しぶっきら棒に言ってしまったので、すぐに自分の態度を後悔して自分の太ももを叩きながら「チッ」と舌打ちをした。


 「良かったら、馬の後ろに乗らないかい?」とディーン・マックイーンは特に瀬都子の態度を気にしないで誘い出した。


 「馬に乗るには、免許とかは必要ないんですか?」


 「免許は関係ないかな。俺は西部の男だから免許の心配はないよ」

 

 「西部の男は免許関係は特に咎められていないのでしょうか?」


 「ないね。カーじゃないからね」


 「カー!?」


 「車」


 「なるほど。じゃあ、さようなら」


 「ベイビー、冷たくしないでよ」


 「じゃあ、よろしくお願いいたします。私、馬に乗ります。乗せてくださいますかね?」と瀬都子なりの恋の駆け引きは、すぐに気持ちが表れるので分かりやすかった。


 「良いよ、ありがとう。ヘイ、ジョニー、行くぜ」とディーン・マックイーンは瀬都子を乗せると爆走しながら一瞬で走り去ってしまった。愛馬のジョニーは凛々しくてカッコよかった。




つづく


ありがとうございました♪

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