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時を越えた贈り物

竣は華絵さんのダイヤモンドのネックレスを見てビックリしています。華絵さんや傘小三郎さんに逢えた奇跡は竣のかけがえのない宝になったんです。

竣くん、朝からテンションが高めです(笑)

 和雄爺ちゃんが部屋から出て行った後に、僕は目を擦ってからネックレスを取り外し確認をしてみた。


 間違いなく華絵さんのネックレスだった。


 僕は寝起きからテンションが上がりっぱなしだ。

 ヤバイ、興奮が抑えられない。


 ダイヤモンドは時を越えても永遠の輝きを保ち続けていく。

 物には持ち主の心や魂が宿ると言われているので、僕が手で触れたり首に掛けたりして直接肌に触れる事で、僕自身の念が新たにダイヤモンドに伝わり、華絵さんが僕に託した願いや奇跡の効力が消えたりはしないかと不安になっていた。


 僕が頭を打って気絶した事は確かなことだし(後頭部に腫れを確認)、誰もが『あって欲しいな』と希望を持って思い描く死後の世界を「あの世」の世界の現実を、一瞬だけ体験した記憶は、少しも絶対に疑いたくはなかった。僕と同じ様な経験をした人が何処かにいるかもしれないし、いないかもしれない。


 僕が「あの世」のほぼ一歩手前で、感じたことは、物凄く愛に包まれているのが分かったという事なんだよ。一歩手前の場所でも、そう感じたのだから、本格的な「あの世」自体となると……、くすぐったいような感じの世界になるかもしれないね。


 華絵さんとの邂逅は新たな自分を引き出す切っ掛けとなった。どっぷりとスピリチュアルの世界に、のめり込むのではなくて、生と死は自然の一部であり、死は悲観する事ではないと感じられたし、死は物質世界から離れる事であり、次のステージである魂の世界に導かれる事だと思えた。


 死について語ることは怖い話でもなんでもない。

 生きていれば、どうしても避けられない話題になるし、眠る前には考えずにはいられない思いの1つになるからね。不健康や不健全な話でもないんだよ。当たり前の事だと思って受け入れているのさ。


 僕は経験したことを、素直に心で感じていたいだけなんだ。僕は僕だ。僕は自分自身にしかなれない。幽体離脱で、とてつもない経験をしたけども、それで変に影響を受けたり、抱え込んだりもしたくないんだ。


 最近の僕は思春期の頭と心で色々と世界が広がっていて、回路が弾けまくっているよなぁ。あはははは。 もっと知らない世界を見たいし知りたいよ! 心から感じていたい!


 夏の陽射しに華絵さんのダイヤモンドを翳してみて強く思ったことは、ダイヤモンドが似合うのは男性より、断然、女性の方が相応しいというのが改めて分かったということ。


 絵画でも女性とダイヤモンドをモチーフした絵がたくさん存在することを考えてみても、この世に存在するあらゆる美と対等に渡り合えるのは女性だけだと強く実感した。


 花、海、空、星、月、太陽、風、雨、雪、四季、宇宙でさえも、どれも全部が女性と重ねて歌を歌うし、女性を想いながら詩を書いて未来に託したりもするんだからさ。

 全ての源は女性にあり、女性は明らかに美そのものでしかないんだ。美や芸術は女性のためにあるんだ。


 独創的で魅惑的なカットを施した二つとない華絵さんのダイヤモンドを見ていると、あの世へと続く幻想と魅惑の世界に再び導かれていきそうな、吸い込まれてしまいそうな、束縛からの解放に似た恍惚感や、体中の血が沸騰して命の安らぎが生まれてくるように思えた。


 華絵さんのダイヤモンドと傘小三郎さんの奇抜でエレガントなオーダーメイドのスーツは、何処かダブって重なって見えてくるのが何とも不思議だった。


 どちらも未知なるデザインをしていた。傘小三郎さんのスーツは鮮明に記憶に残っているので僕は絵に描こうと決めていた。


 華絵さんのネックレスを居間に持っていくのはマズイと思ったので、押し入れの下にある緑色の金庫に仕舞っておく事にした。


 この金庫は、しばらくの間、屋根裏に埃を被って置いてあった物だ。

 

 和雄爺ちゃんが5、6年前に実際に仕事で使用していた物で、僕が3、4年前に譲り受けた。


 暗証番号は当時使っていた和雄爺ちゃんの番号ではなくて、変更してから改めて僕が使用している。


 和雄爺ちゃんが使っていた時の暗証番号は、何故なんだか、よく分からないけれど、本人が隠さずに言っていたので、家族全員が知っていた。機能を果たさない暗証番号じゃ、全然、意味がないんだけどもね。『1009』だったかな? 和雄爺ちゃんが好きなバンドのリーダー(ジョン・レノン)の誕生日が暗証番号だったんだ。(もちろん、誰も勝手に金庫を開けたりはしていないよ)


 今の金庫にあるのは、僕が小学生から中学生の頃にかけて、大切にしていた思い出の秘密の宝が保管されているんだ。


 昔、ある人と2年間、文通していた時の手紙。ディランのライヴのチケット。ディランはボブ・ディランのことさ。ディランは2回見たよ。


 僕が書いた詩集のノートが7冊。「モンパルナスの灯」の文庫本。この本は、古書店だと1800円で売っていたけども、隣の街にある金物屋の横にあった小さな古本屋で100円で売っていたんだよ。ビックリして買っちゃったんだ。


 あとは、ビートルズの写真集、ジョンの写真集、ポールの自伝、ジェームズ・ディーン写真集。ピカソの青の時代の画集、先日お逢いした、ジャン・アレックス・水詩の詩集、誕生日に貰ったホワイト・アルバム(憲二から貰った物)、映画のポストカードが100枚、50個のビー玉、ヌンチャク、バンダナ5枚。

 ヌードデッサン用の写真集。僕の初期の裸婦デッサン画が200枚。それに書きかけの小説が3つほど。ギターのピック。キーがDのブルースハープ。


 小説は照れるなぁ。僕は小説なんて書いたことが無いからさ、一体どうやって書いたら良いのか、今も全く分からないけどもね、手本にしたのはコナン・ドイルとO・ヘンリーとチャンドラーだったような気がするけどなぁ。


 コナン・ドイルは凄いよなぁ。シャーロック・ホームズを生み出したからさ。シャーロック・ホームズはカッコいいよ。

 書いた小説の内容は言えない。


 文通は事情があって「ある人」とやり取りしていたとしか今は言えない。

 美絵ちゃんには見せられない。見せたら絶対に怒られるかもしれないからね。滅多に読み返すことはない手紙なんだ……。

 

 僕は華絵さんのダイヤモンドのネックレスを、手のひらの真ん中に砂を集めるように小さな山を作って置くと、机の中にあった水色のプラスチックの小箱を取り出し、ネックレスを入れてから金庫に仕舞った。


 僕は周りを確認すると、暗証番号を素早く回して、金庫を押入れの奥深くに押し込んで隠した。





つづく


ありがとうございました♪またね♪


(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪

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