4 日焼け止めは必需品
シュンがダメだと言っていたタブーを(シュンが)犯して、怒り狂ったエルナに対し、膝をついて頭を下げ謝罪し(決して土下座とは認めない)本人曰く『軽い』罰で許すということで何とか宥めることに成功した。
「で、その自称『軽い』罰が予定していた勇者討伐を一つ早めることだと?」
「そうだ。妥当だろ?」
「どこがだ! 本当なら一ヶ月先なのに次は1週間だろ!?」
「乙女の胸のサイズを聞こうとしたんだ。まだ優しい方だと思うが?」
「ぐぬっ……」
そこを言われると痛いぜ……。
この辺の土地はほとんど魔界サイドが管理していて、勇者達がいつ頃ここに着くかの検討は立てれるらしい。
最大で半年以内の到着予想が出来き、早い情報により今までこちらが有利な状態で戦うことが出来たとも言えるようだ。
だからって到着日の予測を利用して予定より早く勇者と戦わせる必要はないだろ……。
こちらにきてまだ1日。
右も左も分からないのに1週間で戦いに参加しろなんて自爆行為だと思う。
「それに安心しろ。1週間出来る限りのことは私が手取り足取り教える」
『て、手取り足取りだと……?』
『羨ましい……』
『エルナさんの純潔……か』
「お、お前ら! 別にこれは変な意味ではない! 勘違いするなっ! ここでの決まりとか、戦術とか、そういうことを教えるだけだっ!」
エルナの発言を教え子達は変な方向で意味を取ったようで、顔を真っ赤にしながらエルナはそれを否定していた。
でも期待しちゃうよな。
可愛い美少女に手取り足取り教えるなんて言われたら。
ノクターン的な意味ではないのは少々残念だがいい情報も得た。
エルナは純潔なのか。
強がっていて勝気だけど男の『お』の字も知らない純粋少女ってわけか。
そりゃあ胸のサイズを聞かれて怒るはずだ。
「言っておくが私がこいつを好きになることなんてない! もっといい男を選ぶ!」
だけどそこまで言わなくていいんじゃないんでしょうか……?
俺泣いちゃいますよ……?
こんな男扱いで心にダイレクトアタックを食らったが、被害者は俺だけじゃなかった。
「とにかくだ。さっき私の純潔がどうこう言ったやつは道場1ヶ月掃除だからな。毎日ピカピカにしないと……どうなるか知らないぞ?」
あぁ、純潔バラされたこと、怒ってたんですね。
可哀想に。
ま、そいつはただの自業自得だけど。
睨みを効かせて道場内に戦慄が走ったところでようやく本題に入る。
「こほん。いいかリュウト。取り敢えずこの一週間は戦いに関してのことを中心に教えていく。いいな?」
「あぁ。じゃないと倒せないだろうからな。それどころか一週間で足りるかどうか不安だ」
「そこは大丈夫だ。一週間で足りる」
そう前置きして道場の奥からホワイトボードを持ってくる。
あらかじめ書き込まれたホワイトボードから察するにエルナ、かなりノってるな。
「まずは勇者達についてだ。基本4人1組が主流でその内訳は剣士が2人に魔導師が1人、残りの1人は特殊ジョブが多いな」
「その特殊ジョブってのはなんだ?」
「暗殺忍者や回復魔導師、薙刀を使うやつなども見たことがあるが、使う者が少ないジョブのことだ」
「各それぞれってことだな」
意外とそこがキーマンになってたりするかもな。
地味だが回復魔導師はいると厄介なジョブだろうし。
「って、魔法使うのか? ここが狙われてる理由って魔力を持ってたからじゃ……」
「自分達を守ってくれるために使う魔法は異端じゃないんだろう。人とはそんなものだ」
なんというか……言われればそうだが理不尽だ。
魔法を使って許されるやつと許されないやつがいるなんておかしいのに、それが客観的に見れないとそうは思わないのが普通なんだろう。
「因みに魔導師という括りは攻撃系を扱うという意味で纏めている。特殊ジョブ同様、その攻撃方法は様々だ。簡単にいえば属性があると考えてくれればいい」
「火や水を操るって感覚でいいんだな?」
「そういうこと。厄介だったのは過去に光を操るってやつがいたが、私の中ではそいつが一番だな」
「へぇ。どんな攻撃だったんだ?」
「日光を集中させて日焼けさせられたんだ」
「地味だなおい!?」
「むっ、日焼けは痛いんだぞ? 戦い終わった数日間は体が痛くて眠れなかったくらいだ」
「分からんでもないが……戦い終わった後にダメージ食らっても意味がなくないか……?」
最後のあがきだったのだろうか。
でも面白い戦い方をするもんだ。
因みにエルナはそれ以降戦いには必ず日焼け止めを塗って出陣しているらしい。
よほど痛かったんだな。