その よん
最終話になります、おつきあいありがとうございました。
------------
『不正介入者』だ!
【赤ずきん】の震える身体の中で、ワタシは舌打ちした。
物語をなぞる事しかできない【赤ずきん】はこういった時に『動けなくなる』。
ワタシが入る必要はこれなのだと【お母さん】は言っていた。
『通常と違う』事態に、【赤ずきん】に引きずられずに『対処』が出来る者。
【赤ずきん】の身体を動かせる、第三者。
出会い頭に、【お母さん】を『認識』しつつ『自我』を持って反応し、テストに合格したらしいワタシ。
【赤ずきん】は身体をぶるぶる震わせながら、片手をカゴの中にいれさせる。
手に触るのは、硬い金属のリンゴ。
冷たい感触に、肌がピクリとして、【赤ずきん】が切替わる。
ワタシは【赤ずきん】に緊急対処をさせるためのモノ。
震えが、止まる。
【お母さん】は言っていた、M67破片手榴弾の形をしているけれど、コレは『ホンモノ』ではないと。
それはそうだろう【猟師】も【オオカミ】も、『赤頭巾』の登場人物だミンチになっては困るのだ。
『不正介入者』を、その介入対象から強制的に引き剥がし、送り返す衝撃を与えるモノ。
【赤ずきん】のワタシは一端まぶたを閉じて【お母さん】の笑顔を思い出した。
「安心して使っていいわ♬」
【お母さん】はとっても清々しい微笑みっぷりだった。
目を開き【猟師】と自分の間の距離を目測する。
片手でもピンが抜ける様にカスタマイズされた口をいじった。
「早く渡せ!【赤ずきん】‼」
【猟師】が脅すために銃口をそらした隙に、『武器の使い方を身体で覚えてる』【赤ずきん】は、カゴの中の内の一個のピンを抜き【猟師】に投げつけ、ワタシ達はそのまま近くの茂みに駆け込んだ。
「何だ⁉」
茂みに入る瞬間、ワタシが横目で見た【猟師】は余裕をかましていた。
苦し紛れに【赤ずきん】が、カゴの中の林檎でも投げつけたと思ったのだろう、【猟師】はとっさに左手で銃をおろし、右腕で払おうとした。
うん、リンゴ♬
バクハツするけどな。
ドンっ‼という音が響いて【猟師】の上半身が煙に覆われた。
「うううううううああああああああっ⁉」
【猟師】が物凄い大声で叫んだ。
え? ちょ!死ぬの⁉ 何あの威力⁈
【お母さん】が嘘ついたのか⁉とギョッとした。
緊張したまま、茂みから見つめていると、煙が消え、視線を中空にした【猟師】がぼんやりと立っていた。
突然、ピコーン♬ピコーンと景気の良い電子音があたりに響いた。
『お疲れ様でした【猟師:#1】バグ除去完了しました』
あれ?何か【お母さん】の声みたいな…。
『はい【赤ずきん】が、対不正介入者モードになりましたので、バックアップシステム【お母さん】起動条件が揃いました。
以降、【赤ずきん】周辺1キロ圏内の随時索敵、情報処理、『不正介入者』の後処理を行います。』
おお、そりゃ便利だ。
感心していると、【猟師】のおじさんの周りがキラキラ光って透けて、そのまますうっと消えていく。
『処置済:1体を初期待機エリアに移動させました。』
ああ、よかった、おじさん正気に戻ったのか。
【赤ずきん】の安心の気持ちにつられて、ワタシもちょっと嬉しくなった。
『【猟師:#2】及び【オオカミ:#3】が、【赤ずきん】に接近中、方位:北北西。コンタクトまで後50m』
何ですと……⁉
何で【猟師】と【オオカミ】が一緒に居るの?
ああ、『不正介入者』確定か!
【赤ずきん】が、まるで熟練のゲリラ兵の様に身体をかがめて茂みを匍匐前進していく。
ちょ!
【赤ずきん】が、カゴの中のから拳銃を取り出した。
小さな可愛い手が、流れる様な動作で装填を確認し、セーフティを解除する。
【お母さん】に教えて貰ったとおり、両手でグリップをしっかり持って、ゆっくり息を整える。
『ターゲット二名、前方並んで5mまで接近、こちらは気付かれていません。
正面、銃の有効射程距離まで、カウントダウン 10・9・8… 』
【赤ずきん】は0の声と同時に弾かれた様に立ち上がり、二発連写した。
撃ちだされた弾は、見事に【猟師】と【オオカミ】の眉間を撃ち抜いた。
そして、最初の【猟師】と同じく……。
ああ、【お母さん】言ってたっけ…。
『ちょっとばかり』色んな種類の【オオカミ】さんや【猟師】のおじさんが、でちゃったのよ〜って…。
最初に総数聞いときゃ良かった!チクショウ!
その後、ワタシと【赤ずきん】は、【お母さん】のバックアップのもと、後から後から湧いてでてくる【猟師】と【オオカミ】を次々と片付けた。
揃えてくれた武器をほとんど使い果たしたが、無事、【お婆ちゃん】に薬を届ける事に成功。
フェードアウトする世界の中で、【お婆ちゃん】が【お母さん】そっくりな顔で、お礼を言ってくれていた。
いや、お婆ちゃん、頑張ったの主に【赤ずきん】だから。
そして、私は目を覚ますと、手にはしっかりと何所かで見た赤ワインの瓶を握ってました。
----------
END
-------
お付き合いありがとうございました。




