始まりの朝
さあ、ゲームを始めよう。
時間という名の記憶を賭けたゲームを。
未来という名の過去を賭けたゲームを。
このメモリーゲームを。
最後まで楽しませてくれよ、……人間。
「うるさい」
季節は夏。
いつものように太陽が昇り始めて直ぐに、セミの鳴き声で強制的に起こされる。
あぁ、世の中のセミを残さず世界から駆逐したい。
ただでさえ、睡眠時間が短いんだからもっと寝させてくれよセミ。
はぁ、そろそろ起きるか。
「眩しい」
寝惚け眼で外を見ると、太陽が十分すぎるほど昇り切っていた。
時計を見ると針は十時十八分を指している。
日光の光によって思考がゆっくりと動き始めた。
「……眠い。じゃなくて」
先程まで見ていた夢を思い出してみる。
先に見ていた悪夢は、思い出すのも面倒臭いじゃなくて嫌だ。
思い出すのは、その次の夢だ。
風景等は全く覚えていないが、間違いなく俺ではないもう一人の俺が居た。
そして……いや、コーヒーでも飲みながらゆっくりと考えて整理してみるか。
「ゲームか」
いろいろと思い返してみると、あの夢は事実にしか思えなかった。
話した内容は一字一句は覚えていないが、もう一人の自分が居たことは覚えている。
それに気にも留めていなかったが、過去の記憶も思い出せないというより記憶が消滅しているみたいだ。
それに、自分ではない今日起こる筈の未来を知っているもう一人の自分の記憶が俺の頭の中に存在していた。
「嘘だろ、これ」
けど、それは間違いなく今の俺には事実として存在している。
だって、たった今流れ始めたニュースを既に知っていたのだから。
「洗脳されたとか除けば、こりゃもう疑いようがないな」
腹を括ろう。
あれも俺自身なのだから。
「何もしないで後悔するより、やれる限りのことをしてから後悔しよう。それに……」
もう一人の記憶を思い出して。
「こんな悲しいのは嫌だ。こんなに辛いのも、怖いのも。こんなにも後悔の渦の中で独りぼっちのも。だから、変えよう。未来を。過去を。現在を」
そう決心し立ち上がる。
「さぁ、ゲームを始めよう。明日を手に入れるために、最後のゲームを」
そして俺は、部屋を飛び出した。
「にしても、何でこんなに大切な約束をわすれていたんだろ?だから……今度こそ、この約束を守ろう。うん。それに、守れずに死んじまったら死んでも死にきれない。絶対に、絶対に守るんだ、この約束は」
時間は午前十一時。
残り時間は十三時間。
メモリーゲーム
勝利条件 とある人物との再会(約束の達成)
制限時間 本日午前零時まで
ルール ゲームの最中、神様の仕掛けた様々な障害を潜り抜け勝利条件を満たしてください。
また、制限時間を過ぎても勝利条件を満たせなかったり、プレイヤーが死んだ場合その場でゲーム終了となります。
では、頑張ってください。




