オープニング
さて、ゲームをはじめようか。
これは、俺らが訴え求めたからこそ神様が始めてくれたのだから。
始める前に、このゲームを始める条件として神様が持ち出した契約と制約、つまりはルールについて説明しようか。
もちろん、それを破った時の罰についてもね。
……って、こんな喋り方は俺じゃないな。
うん、面倒臭いや。止めよう。
……さて、お前さ、覚えてるか?
あぁ……いや、覚えてる筈ないか。
このゲームはさ、俺つまりは未来のお前が求めたからこそ始まったんだよ。未来って言ったけど、お前から見たらたった一日後のわけだけど。
にしても、自分に対してお前って妙な感じだな。
まぁ、もう一人の俺って言うより楽だからいいか。
ん、何?『……未来の俺なら勝手に始めんなよ、このボケ』って、しょうがないだろボケ。このゲームを受けるしか過去を変えられないんだから。
『それにしても、過去を変える? どういうことだボケ』だと、とにかく先ずは話を聞けボケ。
『ボケボケ言うな、このボケ』だ? それは、こっちのセリフだボケ。黙ってろ。きりがないからさ。
いいか、よく聞けよ。
ツッコミを入れたければ、後にしろよ。
お前にとってこのゲームは、絶対に勝たないときっと後で物凄く後悔するぞ。
俺は、現に後悔したんだ。胸が痛くて、痛くて、痛くて、痛くて、痛くて、心が体が張り裂けるかと思うほど。
だから、俺はこのゲームを受けたんだ。
悲しいから、怖いから、笑っていたいから。
『……』
神様が提示したこのゲームの参加条件は時間だ。
俺の時間に関係することなら何だって良いらしい。
過去の記憶だろうが、これから起きる筈だった未来、つまりは自分の……寿命だろうがな。
それと、悪夢。
さっきまで、お前が見ていたのがそれに当たる。
タチの悪い本当の悪夢ってのは、現実よりリアルに感じるモノらしい、人から聞いた限りだけど。
だから、安心しときなあれは夢だから。
ただし、これも夢だけど事実だから今度こそ忘れるなよ。絶対に忘れるなよ、絶対に。事実なんだから。
あとこの悪夢はゲームの開始の合図でもある。
まったく、神様というより悪魔のような奴だ。
現に、俺のことを嗤いながら『ただの退屈凌ぎ』だって言ってたし。
それに一々説明するのが面倒だからって、俺にこのゲームの説明をしない限りゲームをやらせる気はないって言うし。俺だって、本音を言えば面倒なのに。
はぁ……まぁ次は、ゲームの内容について話すか。
このゲームのタイムリミットは一日。
一日って言っても、この一日は何度でも繰り返すんだ。
本来の目的を成し遂げるまではね。
つまり、目的を果たすのがこのゲームの勝利条件になるわけさ。
あと気付いているかもしれないが、さっきの参加条件は満たしていたらしい。
ようは、失敗してまた一日を繰り返すたびに一年間の記憶か、一年分の寿命が消えていくってことだ。
ちなみに、このゲームは既に六十九回繰り返してる。
で、そのうち六十四年分を寿命で、五年分を記憶から消したって神様の野郎が言ってた。
本当かどうか怪しいけど、本当だろう。お前も俺も所々幼い時の記憶とか無くなってるだろう。
あと、今回がラストらしいからよろしく。
『…………はい?』って、だから今回でラスト。
『何で?』って、俺も神様に言われた時にそう聞いたら、寿命が一年しかないからだって。
どうしようか?
『どうしようか? って、ホントどうしよう?』って、……まぁ、ゲームにさえ勝てば元に戻してくれるみたいだから何とかなるさ。
何嘆いてんのさ?
『俺って、こんなに能天気だったか?』って、言われてみればこれはびっくりだ、うん。
『とにかく、今回こそこのゲームの勝利条件を満たして勝てば万々歳なんだろ?』……か、確かに。
よし、くよくよ悩んでいてもどうしようもない。
全てを七十一人目の俺に任せる。
さて、これから九人分の記憶をお前に託す。
まぁ、記憶って言うより情報っていったほうが正しいかな。
いや、記憶でいいや。面倒だし。
『何で九人分の記憶しかないの?』だって、此処に居る俺と今までの六十一人の記憶は殆ど同じだからさ。
いや実は、つい最近まで説明をしても記憶の共有をしなかったせいで、どいつもこいつも起きると忘れていやがんのさ。
全部俺自身なんだけどさ、まったく呆れちまう。
ただ、勘違いするなよ。
全部神様の糞野郎が悪いんだからな。
最近まで、今までの俺と記憶の共有が出来るなんて教えてくれなかったんだから。
はぁ……、さてさて、いい加減に始めよう。
早くしないと朝になっちゃうからな。
そういえば、目的に関して全然話してなかったけど大丈夫……だな。
後で、託した記憶でも頭の中で見れば必要な事は全て分かる筈だし。
ちなみに俺は、今までの俺つまり未来のお前の残留思念?みたいなものだから後で呼びかけても居ないからな。
それじゃあ、あとは頼んだ。
今回こそ、あの約束を……。
視界が白く歪んで、自分でもあと少しで意識が覚醒して目覚めてゆくのが理解できる。
それにしても、現実は小説よりも奇なりって言われているけど本当だったんだ。