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メモリーゲーム  作者: 空中庭園
10/12

願い

 メモリーゲーム(最終章)

 


 勝利条件      彼女との再会

           二人(プレイヤーと彼女)の生存



 制限時間      本日午前零時まで



ルール       今回のゲームには障害は一切存在しません。

           また今回は、一から始まるのでなく前回のプレイヤーの状態を引き継いだまま始まります。

           制限時間を過ぎて勝利条件を満たせなかった場合、即ゲーム終了となります。



代償        ゲーム終了時、代償として生まれてから今までの過去全ての記憶が消えます。

            


           では、頑張ってください。




「うるさい」

季節は夏。

いつものように太陽昇り始めて直ぐに、セミが鳴きその音で強制的に起こされる。

あぁ、世の中のセミを残さず世界から駆逐したい。

ただでさえ、睡眠時間が短いんだからもっと寝させてくれよセミ。

はぁ、そろそろ起きるか。

「やっぱり眩しい」

寝惚け眼で外を見ると、太陽が十分すぎるほど昇り切っていた。

時計を見ると針は十時十八分を指している。

 再び始まった今日。

 やることはただ一つ。

「彼女を助け、約束を果たすために」

時間は十時二十分。

彼女が事故に遭うまでもう時間がない。




 身支度を終えて、俺は駅前まで来た。

 さて、少し状況を整理しよう。

 彼女の巻き込まれる事故に知っていることは、駅前ということと昼頃に起きたということだけだ。

 それに……。

 多分前回、ここに来た時にあった救急車やパトカーや野次馬の群れはこの事故を指していたのだろう。

「こんなに近くに居たのに俺は彼女に気付かずにいたのか。悔しい。気付いていれば助け出すことも出来たのに」

 だから今度こそ絶対に助け出してみせる。

 そう俺は胸の内で決心した。

 ただ一つ問題があった。

 彼女を事故から回避させ助け出すにも、成長した彼女を知らない。

 本当にどうしようか?

 事故現場になるだろう場所の近くの壁に寄りかかり、ここに来る途中でコンビニで買ったパンを貪る。

 それにしても味気ないな、このパン。

 はぁ、前回の今日実家で食べた野菜炒めがまた食べたいよ。

 本当に一度帰ろうか。

 確か、いつ帰ってきてもいいって言っていたし。

 うん、そうしよう。

 そんな事を思いながら、絶えず動く人ごみをただ無意味に眺めていた。

「こんな所で事故なんか起きたら大惨事だな。前回もすごい騒ぎになったんだろうに」

 そう呟き時計を見る。

 時間は十一時半。

既に彼女はこの近くに居るのだろうか?

もし居たとしても事故なんか起きなければ一番いいのに。




 そして、車のクラクションの音がけたたましく駅前に鳴り響き、俺の切実な願いを無残にも打ち破る。

 信号機を無視し、暴走したまま走る一台の黒の高級外車。

 あれが、事故の原因となる車か?

 それにしても、何であんな車がこんな田舎都市走ってんのさ?

 そんなどうでもいいツッコミとは裏腹に、俺の体と口は既に動きたしていた。

「逃げろ」

 俺が叫ぶと同時に車がここに向かって突っ込んできた。

 それに気付いた人々が一目散に逃げ出していく。

 歩道に沿って走っていく車に対し、人々は建物内に避難したりここから走り去って行く。

 車とともに恐怖が伝染していくなかで、何故か自分だけが周りより冷静でいられるのを感じる。

 ただ一つを除いて。

「すまない。約束守れないかもしれない」

こんな騒ぎの中、彼女だけ探し出し助けるのは無理だ。

そう思い呟く。

 そして俺は走り出した、車に向かって。

 いや、車の進行方向に居る少年に向かって。

 この騒ぎで親と離れた心細さと車が向かってくる恐怖からか、ずっとそこで動かず泣いていたのだ。

 見捨てることなんて出来ないよ。

俺は少年を守るために突き飛ばした。

 次の瞬間鈍い音がし、俺の身は激しい痛みとともに宙に跳ね飛ばされていた。

 その後車は壁に衝突し動きを止めた。

 そして俺の体は思いっきり地面に叩きつけられた。

 かすかに残る意識の中、突き飛ばした少年が無事なのは確認できた。

 ……無事で良かった。

 徐々に狭まって行く視界。

 道路は赤く生暖かい血溜まりを描く。

 そこに浮かぶおもちゃの指輪。

 飛ばされた時にポケットから落ちたのだろう。

 動かない腕を無理やり動かしなんとか指輪を握りしめる。

 良かった、壊れてない。

 でも……。

「ねぇ、待っ……よ。君……なの? ねぇ、まっ……てよ。」

 誰かが話しかけてくる。

 ……あぁ、温かい。

 だけど、何も聞こえないし、何も見えないよ。

 でも……、そんなことより。

「ご……めん……。ごめん……。やくそくまもれ……なくて、ごめ……んな」

 ああ、世界が回って廻って……、そして終わっていく。

 


 

結局、今回も何も出来なかった……な。

 


 


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