夢
この世界に、自分は何を訴え何を求めていたのだろうか?
目が覚めた時、俺は白い檻の中にいた。
鼻を刺すような消毒液の匂い。
規則的に聞える電子音。
一滴一滴と滴り落ちる点滴とその管。
風によって揺れ動く純白のカーテン。
その隙間から漏れ出した光が白い壁に反射して、やけに眩しい。
「生きているのか、俺は?」
虚ろな意識の中で、知らずにそう呟いていた。
「生きている?いや、死んでいないのか、俺は」
無意識におこなっていた問答。
それによって、覚醒しだした意識と身体。
しかし、体は動力の無い機械のように少したりとも動きだすことはなかった。
僅かに動く首で周囲を見渡すと、此処が病室なのは直ぐに理解できた。
だが、今はそんな事はどうでもいい。
確かに、死んだ。死んだ筈なんだ。
そう、あの時。
だって、この目で見たんだから。
「自分に殺されるのを」
「自分が死ぬのを」
自分の言葉に合わせるかのように聞えた声。
その声はどこか暗く、また重く、恐怖を感じさせながらも、自分にとって馴染み深く思わせるものだった。
顔を横に向けてみると、先程見渡した時には誰も居なかったのに窓際に影が立っていた。
影が一歩、また一歩と近づいてくる。
それに合わせたかのように、胸が締め付けられ鼓動が速くまた痛くなっていく。
そして、その影はベッドに横たわる俺を見下ろした。
顔は、後ろの窓辺から差し込む強烈な光によって陰って見えなかった。
やがて太陽が雲に隠れたのか、光が弱まり顔が見え始めた。
そして、理解した。
道理で馴染み深い声……いや、いつも聞いたことのある筈の声だった訳だ。
「そうさ、君は死んだよ。確かに。なにしろ、この俺が君を、……いや、俺自身を殺したんだから。」
そう、そこで嗤っていたのはどう見ても俺自身だった。
そして俺は、睡魔に襲われ再び眠りに就いた。




