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策士
なし
なぜ、彼がその役を
引き受けたか、
のせられたか、はめられたか、
今となっては
誰にもわからないが
淳は、したきりすずめを
熱演した。
しかも、
正直者のお爺さんが
彼の役であった。
多くの園児たち
あるいは
先生方も
誰しもが
「悪いお爺さん」
それが淳に
ぴったりであろう。
役を地でいく
劇になろう。
と
予想していた。
正直者のお爺さん。
ふたを開けてみれば
淳は好演した。
園に
策士がいた。
それしか考えようがない
展開であった。
発表にあたっては
多くの保護者から
拍手喝采をあびた。
そこに
父の姿があったかは
わからないが
母は、
ひっそりと
小さな園の体育館の
入り口から
その熱演を
みて
一人
目頭を熱くしたらしい。
なし