放浪の失敗
なし
しかしながら
その山道は、大冒険であった。
何度か、大叔母様に見つかり
それは笑われながら、
何かを淳に手渡してくれた。
ある時は、とったばかりの小さいミカンであったり
山菜であったり
ところが
宏一の妻、京子だとこうはいかず
ぎゃくに借家にどなりこまれそうに
なるところを
必ず騒ぎを聞きつけて、大叔母様に
逃げろと手をふられ、転がるように山を
駆け下りるのであった。
そんなことが何度かあったからか
井上家の防犯の問題か
いつしか、裏の青い扉には
鍵がかけれるようになった。
しかしながらも
淳は放浪が好きであった。
家にいられない何かがあったのかもしれないが
家よりも外で何かをしていた。
歩いていた。
子どもはみなそうであって
とても好奇心があって何かおもしろいのは
ないか、
楽しいことはないか探していたのかもしれない。
実際、落ち着きがなく。
人の話もよく聞いていなかった。
そして幸せなことに
まだ、開発の進んでいない里山がたくさんあり。
野を越え、山越え、淳は歩いた。
一度こんなこともあった。
父が絶対に離れるなと言った。
はじめて訪れる、大きな国道沿いの店。
さびしくなって思わず離れて
迷子になって、泣き叫んだ。
夜だったこともあり。
土地勘がまったく働かなかったのだろう。
その後、必死で探した父から大拳固をもらい
家でふて寝をした。
母がなだめてくれた。
それが唯一。
彼の放浪で失敗したことであろう。
なし