Var.Ⅶ:Andante cantabile~Allegro
「そうか・・・つらいのか。」
「私、どう生きればいいのかわからない・・・」
マリーはさめざめと泣き、ジョンは慰めていた。
「まあでも、現実にどう認識が変わろうと受け入れるしかないよ。」
「でも、私は怖い・・・。」
「例えば突然自分に不治の病があると宣告されて、でもどうあがいても無理で、でも考える内に受け入れてそれに応じた人生を送るみたいな感じにさ。」
「身近に感じて、それに合わせるのね。」
「うん。」
「でも、あれこれ変わったり繰り返したりするのが怖い。私ってどこにあるの。」
「それはわからないね。」
「今だってそう。」
「まあ現実なんて合理的と思う連中が多いから合理的であって、実際はそうではないんじゃないの。」
「そうなのかなあ…でも分からない。」
「何が?」
「ここは変奏曲なんでしょう?」
「あぁぁぁそうだね。でも、音は使わない、世界そのものが変容する変奏曲だ。ストーリーは確かにないが、ストーリーなんてものは語り手のエゴに即してるわけで、そもそも物事に明確なストーリーなんてないのだ。」
「つまり器楽的ですらないのね。」
「まあそこまで言うとそうだね。」
「じゃあここってなんなの。なんのためにこうなってるの。」
「それは答えられない。」
「さっきから何度も、パッサカリアって話をよく聞くけど、ひょっとして・・・・」
「そのとおりだ。」
その時、誰かが後ろから背中を二回叩いたので、何だろうとマリーは振り返った。つられてジョンも振り返った。それは鎌田であった。鎌田は叫んだ。
「真田を元にもどせええええええ!!!」
ジョンは言った。
「いやだね。君はロマンを破壊しに来たんだね。そうはさせない。」
「なんだと!?」
危機を察して、マリーは逃げ出した。
「あ、マリーが逃げた!」
ジョンはマリーの後を追った。
「まてじじい!」
鎌田はジョンの後を追った。
マリー=真田は逃げているうちに一本道を走ってる事に気付いた。他の道には行けない。それはただの道ではなかった。走るうちにさまざまな回想が駆け巡っていくのである。後に続く二人もその道へと入っていった。追いかける。
そうこれからフーガが始まるのである。
作者注:Fugaとはもともと「追いかける」意味。