Var.Ⅵ:Waltz
「何するの?」
「ワルツだ。」
真田と、いつの間にかジェントルマンとなった老人が、背景に流れるワルツと共に踊り、話す。
「これは現実的な物語かしら。」
「ああ、どうかな、お嬢ちゃん。比較するものも何もないからね。」
「私がおにんぎょあそびしてたマリーちゃんとジョンくんみたいな偽の世界じゃ・・・」
「何言ってるんだ、マリーちゃん。」
「え・・・・」
「私はジョン。マリーよ、自分を忘れたか?」
「私、真田って人だと思ってた。」
「まあそう思うのも無理はあるまい。」
「でもこれは現実なの?」
「そう、そのはずだ。君は今まで悪い夢でも見てたんだね。この世界は単純な法則でできている。」
「何?」
「君もさんざん聞かされただろう。」
「あ・・・。あれは全てがどんどん改造されている・・・なんか世界的な操作がされている・・・。気分で物事は移ってるけど何が起きてるのかさっぱり分からない。」
「それが芸術技術ってやつよ。」
「そんな!」
「だから変奏曲だって物語にするのも可能なのだ。」
「いやだ・・・。」
「ブラームスなんか、最後にパッサカリアみたいなの持ってくの好きだけど、パッサカリアとかだって物語にするにh。」
「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」
そう言ってマリーは後ろを振り返り、走り去っていった。
鎌田はジョンに言った。
「…今のは何だったんだ…」
「…分からない…」
「妙なお嬢さんもいるもんだな。」
「ああ。」
「ところで、そろそろお食事がでるからテーブルに着くか?」
「いいよ。」
マリーは舞踏会のお城から逃げに逃げた。シンデレラみたいに12時になったわけではない。ただ、恐ろしくて恐ろしくて何もかもから逃げ出した。
そして森のはずれにたどり着いて、息切れして一休みした時、誰かが後ろから背中を二回叩いたので、一瞬あの老人ではないかとヒヤリとして、やはりまたあのジョンであった。
「どうしたんだい。」