Var.Ⅱ:Adagio~Piu mosso
「ねえねえマリーちゃん。」
「なんだい?ジョンくん。」
家で真田は隠れた趣味である人形遊びをして、一人で二人分の声を作ってしゃべっていた。
「今日真田おじちゃん落ち込んでるけど何があったんだろうね。」
「あぁ、確かにね。いろいろあったからね。」
「例えばマリーちゃんとジョンくん同士が、ここで喧嘩して、でも話し合って仲良くなれば元気になれるかな。」
「身近に感じてくれるから効果はありそうだよな。」
「うん。」
「ロンドン橋でもすれば、なんか何度も生き返ったりみたいな事とかできるよね。」
「実際人形だからね。」
「燃やしたってそう。」
「まあなんにせよ私たちは真田おじちゃんの心の存在だから、私たちがなんとかすればいいんじゃないの。」
「そう、そのはずだけど…別に思い当たるのが一つある。」
「何?」
「変奏曲。」
「あぁぁぁなるほど。あれは小曲をどんどん改造するみたいな曲だからなんか音楽的な操作が目的みたいなもんだよね。気分のドラマ性はあっても標題的な明確さは確かに薄い。」
「まさに器楽的。」
「それが?」
「だから変奏曲を物語にするのが無理がある、と思って以来、真田おじちゃんはこの世界も変奏曲じゃないかって悩んでるんじゃないかなあ。」
「確かにねー。」
「まあおじちゃんはそう言うの悩むの好きだけど、そのうち解消されるんじゃない?」
「そうなるといいね。」
その時、誰かが後ろから背中を二回叩いたので、何だろうと真田は振り返った。それは老人であった。老人は叫んだ。
「あああああぁぁぁぁ!!!」
そう言って老人は後ろを振り返り、走り去って家を出た。相田も叫んだ
「あああああぁぁぁぁ!!!」
(…また何だあのおやじ…家に来やがった…)
(…でも分からない…)
(人形遊び見られた…)
(はずかしい…)
(こういう時、音楽でも聴いたり映画観たりして気を落ち着かせるか?)
(それもいいかも。)
真田はそう頭の中で会話しながら、CD・DVD棚を覗いていた。いつも裏面の映画の広告を見るのが彼の楽しみだったが、それをするのも今日で何回目だろうか。
そしてCDをプレーヤーにかけて、ゴールドベルク変奏曲を聴いていた時、電話の呼び鈴を二回鳴った。一瞬あの老人ではないかとヒヤリとしたが、鎌田の声であった。
「もしもし?」




