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宮中日常録
朝、内裏の廊下を歩くと、
そこかしこに笑い声と囁きが溶けている。
恋の話。
噂話。
そして、誰かの悪口。
「ねぇ聞いた? あの右近の女房、殿方に手紙をもらったんですって。」
「まぁ……それ、返事はどうなったの?」
私は横を通り過ぎながら、扇で口を隠して笑う。
「恋文の行方ほど、面白い物語はないわね。」
――宮中という場所は、まるで万華鏡だ。
光の角度ひとつで、人の顔がころころ変わる。
笑顔の裏に計算があり、
沈黙の奥に企みがある。
でも、それが退屈を凌ぐ最高の娯楽でもあった。




