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筆をとる理由
筆をとる理由
私は筆を手にした。
それは、世界を“記録する”ためじゃない。
世界を愛した証を残すため。
「この美しさを、誰かと分かち合いたい。」
たとえ千年後、誰も私を知らなくても。
この一文が、誰かの胸をふっと温めるなら――
それでいい。
私は再び、筆を走らせた。
夜明けの光が障子を照らし、
墨の色がほんの少し金色に見えた。
「……春はあけぼの。
そう書いた瞬間、私の中の“春”が、ようやく目を覚ました気がした。」
あとがき↓...
四季の描写―それは清少納言の“心の鏡”だった。
彼女は、花を見て花を語らず、
風を感じて風を描かず、
そこに宿る情緒そのものを書いた。
「をかし」とは、美しいだけの言葉ではない。
それは“気づく心”のこと。
誰も気づかない瞬間に目をとめ、
「いいな」と感じられる余裕。
その一瞬の感性こそが、
清少納言という少女を千年の時を超えて輝かせている。
「美しいものを探すんじゃない。
美しいと思える自分でいなさい。」
それが––
彼女がこの章で伝えたかったすべて。




