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冬はつとめて
夜明け前の冬。
吐く息が白く、指先がしびれる。
廊下の板は凍りついて、足音が小さく響く。
炭の火が赤く灯っている。
部屋の片隅に、その小さな光だけが生きていた。
私はその火を見つめて、そっと微笑む。
「寒いのに、どうしてこんなに温かいんだろう。」
炭火はゆらゆらと揺れながら、まるで心臓の鼓動のようだった。
私は手をかざし、そのぬくもりを感じる。
「人の心も、こうやって温められたらいいのにね。」
その言葉は、部屋の冷たい空気の中に消えていった。
外では鶏が鳴き始め、
都の屋根の向こうに薄い光が差していた。




