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栄華の裏側
宴が終わり、静けさが戻る。
夜風が廊下を渡り、灯が揺れた。
私は独りで庭に出る。
月が池に映り、まるで空と地が溶け合っているようだった。
「美しすぎる夜ほど、少し怖いわね。」
その声は誰に向けたわけでもなかった。
背後で衣の音。
振り返ると、定子様が立っていた。
『眠れぬの?』
「はい……光が強すぎて、影が消えません。」
定子様は少し微笑んで、私の肩にそっと手を置かれた。
『影があるから、美しいのよ。』
その一言が、心に深く刺さった。
この人は、光を知り尽くしているからこそ、
影の冷たさも受け入れられるのだ。




