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詩の宴
帝が御座につかれ、和歌の題が告げられた。
「題は“月に思ふ恋”」
殿上人たちが順に詠む。
声が高く、風雅で、まるで音楽のようだった。
そして、定子様が微笑んで私を見る。
「少納言、あなたも一首。」
場の空気が静まり返る。
私は少し考え、筆をとって詠んだ。
『光こそ満ちぬる月の影なれど
心の闇は なお隠れなし』
一瞬、息をのむ音が聞こえた。
帝が、ゆっくりと頷かれる。
「言の葉に魂が宿るとは、このことか。」
定子様の瞳が、少し潤んでいた。
私は深く頭を下げたが——
胸の奥で、何かがそっと震えた。




