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恋と筆のちがい / 言葉は恋を超える
恋は燃え尽きる。
けれど、筆は残る。
恋人は去っても、文は私の中に生き続ける。
それを読むたびに、あの夜の灯、あの香、あの声が蘇る。
「言葉は、永遠の恋人ね。」
だから私は、もう恋を恐れない。
恋が終わっても、筆がある限り、私は寂しくない。
書くことで、心は常に誰かと対話している。
それが、清少納言という生き方だった。
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夜明け。
筆を置いて、障子の向こうに光を見る。
春の朝のように、世界が新しく感じられた。
「恋って、終わるものじゃなく、
言葉の中で続いていくものなんだわ。」
紙の上には、乾ききらぬ墨の跡。
まるで心臓の鼓動が、そのまま黒い線になったようだった。
「愛とは、声ではなく、言葉の記憶。
書くことでしか、私は人を抱きしめられない。」
私は文を折り、香を焚き、箱にしまった。
それは、恋の終わりではなくーー
言葉の始まりだった。




