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恋の終わり、文の永遠 / 恋文の心得
その人とのやりとりは、やがて途絶えた。
理由はわからない。
けれど、文の束は今も香を放っている。
「終わった恋ほど、美しい香りを残すのね。」
女房たちは涙を流したが、私は微笑んでいた。
「だって、文の中では、彼はいまも生きているもの。」
言葉は、時を閉じ込める器だ。
声も姿も消えても、文字は残る。
それが、書く人間の残酷であり、救いでもある。
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私は後に、若い女房たちにこう教えた。
一、文は短く。余白に想いを残す。
二、香を焚くべし。香りは言葉を超える記憶なり。
三、返事を急ぐな。間こそが恋の呼吸なり。
四、嘘をつくな。だが、本心はすべて書くな。
「恋文とは、心を全部見せない芸術なの。」
と、微笑むと、若い女房たちは顔を赤らめた。
「少納言様は、まるで恋の指南役でございますね。」
「指南じゃないわ。生きる稽古よ。」




