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枕草子 -現代風-  作者: 葉山乃
第4章 恋文の章 —愛の形と、言葉の魔法—
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恋の始まりは、筆先から / 最初の恋文

恋は、声ではなく筆から始まる。


貴族の世界では、言葉こそが愛。

姿を見せるより先に、書の筆跡で心を交わす。


一枚の和紙。

一滴の墨。

そして、一息のためらい。


「恋文ってね、書いた瞬間から勝負が始まるの。」


文字が整いすぎても冷たく見える。

崩しすぎても品がない。

言葉を選ぶ手の震え一つにも、恋の温度が宿る。


私は硯を前にして、

ゆっくりと筆を持ち上げた。


—————————————————


その人は、春の庭で私に微笑んだ。

名は出さぬが、文才に秀で、声に品があった。


出会いは、偶然のようで必然だったのだと思う。


「あなた、よく筆を持たれますね。」


「書くのが好きなんです。世界が黙っていられないので。」


「……では、私にもその“世界”を少し書いてくださいますか。」


その瞬間、胸の奥で音がした。


夜、灯の下で筆をとる。

彼に贈る最初の文。


『春の風に心ゆらめく花のように

あなたを思えば筆の先も震えます』


手渡すことなく、私はその文を折り、香を焚いて包んだ。

香は、白檀。少し甘く、静かに染みる匂い。


「これで、言葉が彼に届く。」

そう思うだけで、胸の奥がふわりと熱くなった。

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