14/29
をかしの灯
夜更け。
蝋燭の炎が、紙の端で小さく揺れている。
その光を見ながら、私はそっと呟いた。
「書くというのは、人を愛することね。」
理解できない人も、腹が立つ人も、
筆にすれば少し愛おしく見えてくる。
中宮様の笑顔、女房たちの囁き、
そして恋に泣く少女の背中。
すべてが“をかし”で、すべてが“いとしい”。
私は墨をすり、次の紙を広げた。
「さあ、次は誰の心を描こうか。」
その瞬間、また一つ、灯が灯った。
宮中という世界の夜に、
言葉という小さな星がひとつ、瞬いたのだった。




