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恋という名の戦場
昼下がり。
私は香を焚きながら、恋文のやりとりを見つめていた。
「少納言様、また誰かに文を……?」
「いいえ。私は観察してるだけ。」
恋文を書くというのは、戦だ。
一文字、一句に魂を込める。
筆の運び、墨の濃淡、紙の香り――すべてが武器。
「手紙の文字で、その人の心がわかるのよ。
たとえば、墨が濃い人は情熱的。
薄い人は……ちょっと冷めてる。」
「なるほど……少納言様も、ずいぶん見抜くのですね。」
「ふふ。恋の観察者って、楽しいわよ。」
それでも、ときどき胸が少しだけ痛む。
誰かが恋に破れ、涙を流す姿を見るたびに、
「をかし」と思いながらも――
ほんの少し、自分の心も揺れているのを感じる。
「恋って、書くのは楽しいけれど、するのは少し怖い。」




