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第Ⅰ話 《業火が齎す悪魔の囁き》

それは、神の予言が開示した宿命か?

または、虚構なのだろうか?


行き着く先の未来は私たち人間では到底計り知ることが出来ない。現在に至るまでの過程に起こりうる事象はすべての根源における条件に基づくが、それとは異なる一つの事象を見失う傾向があった。


そう。人間とは過ちを犯す生き物だ。

大半の人生を繰り返していく。


何度も、何度も繰り返した時間のなかで私たちが〝救う〟と約束した命の燈火は無情にも原型を留めることなく鎮火した。


高度な医療技術や治療を施しても、それ自体に意味はなく、鎮火された炎が再燃することもない。

絶えず繰り返す事象に成す術がなく。


たとえ、その現実から目を背けようとも突きつけられた光景は残酷なまでに私たちに絶望を与えた。

この世界には偶然の産物により発展した魔術が近代化の科学技術と交差したことで

魔力適性が一定値の基準を満たした者は魔術師、適性のない者は非術師と蔑んだ。

その戦術は戦禍と化した市街区などにも導入され始めていた。


魔術が。砲撃が。殺戮兵器が。

数多の戦場を支配し、飛び交う光景。


「―――……私の希望が……」


私は認識を見誤った。

……いいえ。違いますね。

そう認識せざるをえないと判断したことが間違いそのものだったことに。

敵の謀略に嵌ったことに気付かず、案の定絶望的な状況にまで誘導されていた。


自身の迂闊な行動が戦場を戦禍に染めてしまい危険が伴う結果を招いたことに後悔する。

それは繁栄した街並みを一夜にして激戦区へと変貌させる原因となった。

語られるは伝承に基づく物語。

今宵に起きた惨劇は後世の歴史に受け継がれていく。



人間の感情は制御不能に陥ることがある。

大抵は自己嫌悪か、周りの人間を巻き込んでしまうかだ。


前者であれば自身の心理状態が要因の一つでもあるが後者は違った。

単なるストレスから生まれた嫌悪感だろう。


自身のミスで上司からの暴言や長時間にわたって叱責された経験、もしくは最重要殲滅作戦など高難易度の危険任務に失敗したときなど、緊迫した状況では集中力も途切れやすい。

その状態に陥るほど身体は鉛のように重い。


深い海底の奥底に沈み込んでいくみたいに暗闇が視界を覆い不気味な静寂が影に潜む。以前までは活気が溢れて繁栄した街並みは今となっては賑やかだった頃とは違い、とても閑散とした風景だった。

亀裂を帯びて跡形もなく崩壊した建造物や瓦礫の山が周囲に散乱している。


都市の平和を象徴とする面影は消えて、犯罪者の悪意や憎悪が蔓延る。

閑散とする街並み。腐敗した廃都市。黒化した蒼海。

新緑の地は死骸臭に汚染され、枯れ葉のように朽ちていく。


そして世界の安寧と秩序に脅威を齎し、猛威を振るい続ける悪魔の存在。

それが―――、感染型致死性ウイルスの発現だ。


この世界には、〝根源〟が存在する。

根源とは……簡潔に言えば「真理」と同義の存在ではあるが必要な全ての事象の始まりであり、その全てを記録する媒体だ。記録した媒体には魔力を帯びた元素が宿るとされており、それを起点に魔術式を構築し複写・投影を行う。


元素には炎属性、水属性、風属性の三大元素と光属性、闇属性の相対性理論に基づく物質や叛属性、死属性といった理論値に属さない物質など。

それらの情報源が根源へと収束される。


つまりは死属性が付与された病原体に感染しても現代とは違い早期に命を落とすという訳でもない。

感染の対象は年齢を問わずに抗原体を持たない非感染者または魔術適性が皆無な人間とされる。


さて、少しばかり閑話休題としよう。

一つ疑問に思うことがある。


何故、感染型致死性ウイルスは発現し世界に猛威を振るうのか?


その解答は数年前にメディアにて報道されたとある記事が最初の発端で、事件の真相に関与していたことがのちに発覚する。それは最東端に位置する旧帝国支配区域の地下施設で表舞台には公表せず、極秘に研究が進められていた実験だ。

報道をみた視聴者は強く非難する。

気分を害するような非人道的な実験調書に。


まずメディカルチェックで健康状態と判断された人間から血液を採取し、鑑識にて数値化した結果を基に感染者あるいは非感染者と認定される。

もし、感染者と判断された場合は別棟の隔離施設へと移動した。


その後はカプセル型のコールドスリープに仮死状態で保管されたのち殺害され、死骸の身体を解体し、心臓を摘出する。

その心臓に猛毒の原液を注射した直後、数回にわたり激しく脈打つ鼓動の音。


ときに。

極秘の実験により誕生した感染型致死性ウイルス《輪廻の幻想華》は人間に有害のある代物だ。


密着する空気層に繁殖した致死性の病原体を非感染者が一息吸えば、いかなる生物であってもそこに存在する物質や身体は腐敗し、皮膚は爛れ、心臓は破裂する。

病気には相違ないが。

本来であればワクチン療法を投与すれば対策はできた問題だ。


しかし、この病気の本質はそこではない。


《輪廻の幻想華》に感染した者は感染源の傷痕から磁気を帯びた砂鉄のようなものが付着する。

それに順応するかのごとく黒曜石の結晶が突出して身体を蝕んでいく。


痛みはなく。痙攣もない。

ただ無痛の感覚だけが神経に伝達されて動脈から静脈へと全身を廻るように血液が巡回していく。


ただし。医療技術としてワクチン療法の効果に有効性を認めざるをえないが。

健康的な状態から感染しないための事前予防であり治療を施したとはいえない。


現状では《輪廻の幻想華》を治療する技術は実用化されておらず、その結果において薬物に浸る人間は脳から伝達される危険信号を感知できずにいた。そのため、政府機関にも報告せずに機密理念に基づく極秘の実験は残酷なまでに〝人間〟の尊厳や感情を悉く崩壊させた。


それは―――、霞鏡都市に滞在していた〝輝鏡なき(ラスティン・)焱鳴の聖跡(エルミアーデ)〟に所属する私たちにも少なからずその影響を及ぼす結果となった。

皆様、初めまして。

作者の久遠 鏡夜と申します。


この度、

「《破滅の魔女》に穢れた私。世界輪廻を願い、終焉へと誘う」を投稿させて頂きます。

これは僕の初投稿作品となる《叛逆者》とよばれた僕は世界を破滅へと導くに続いて第2作品目となる新作の小説となります。新たにストーリーを構想し主軸となる物語の展開構成を考えていますので、ぜひこの機会にお読み頂ければと思っております。

また、先程ご紹介致しました別シリーズの小説も違った内容で面白く読者の皆様にも楽しんで頂けるような作品を目指していますので気になった方はこちらも読んで頂けると嬉しい限りです。

それでは皆様、次回の更新もお楽しみに。


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