スーチローマと理に適った行い
「人間の執着の厄介さは、恐ろしいことね」
神様は、ため息を吐いてから、語り始めた。
「分かっていて欲望が止められないこともありますからね」
「そうね。ただ、より悪いのは。
貪りと怒りが自分自身から生じることを理解しない人よ。
彼らは自分自身の心の働きを、理解していないの。スーチローマ君」
スーチローマではないが、私は何ともいえない気持ちになった。
「執着はどう捨てれば良いのでしょうか?」
「難しいわ。それを求める為に人は修行をするのでしょ…
願わくば貴方は、自分の心の働きを誰かのせいにしないようにね」
神様は少し悲しい顔をして、そう言った。
私は心の働きとは何かと考えながら、眠りについた。
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「出家した人がただ偉いと思うかしら?」
神様は、手を空にかざしながら、語り始めた。
「目指すもの無き行動だと、意味がない気がしますね」
「ええ。仏教では究極の修行?っていうのが最上の宝みたいだけど。
勘違いしていまうと、人を苦しめ、論争を楽しんでしまうの。
理に適った行いが出来ない人になってしまうわ」
私はぼんやりと、その人間を想像した。なんともいえない気持ちになった。
「その人間は、何もかも捨てたのに何も得られないのですか?」
「そうね。そして、その人間を汚れて清めがたいと評して排除するのも簡単ね。
ただ、人間はそのように切り捨てても良いものなのかしら。難しいわね」
そう神様は言った。
私は理に適った行いとは何かと考えながら、眠りについた。