恥とこよなき幸せ
「恥知らずめ」
神様は、冷めた顔で私を見つめて、語り始めた。
「ごめんなさい」
「ふふっ、冗談よ。恥知らずの隣人とは、こういう人のことを言うの。
一つ、自分の出来る仕事を引き受けない。怠惰な者
二つ、良い言葉だけ囁き、何も行動に移さない。嘘つきな者
三つ、関係の悪化を恐れて、良き忠言をしない。聞くだけの者」
私は少し疑問に思って、神様に尋ねた。
「隣人に期待することもまた、執着ではないですか?」
「さあ。この締めくくりは独居の安寧を謡ってるけど、そうなのかもしれないわね」
そう神様は言った。私は恥とは何かと考えながら、眠りについた。
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「こよなき幸せとは何だと思う?」
神様は、私の頬を撫でながら、幸せそうに語り始めた。
「平穏ですかね。人によって異なるものかと」
「そうね。色々なことが挙げられる気はするわ。
一つ、愚者に近づかず、尊敬すべき人を尊敬すること。
二つ、身に適ったところに住み、徳を積んで、誓願を持つこと。
三つ、自制が出来、謙虚であり、正しい行動が出来ること。
四つ、家族を大切に出来て、誠実に事に当たり、仕事も安穏であること。
五つ、人を重んじて、足ることを知り、感謝出来ること。などなど」
道理ではあるが、一般的な観念であると思えた。
「この幸せとは、誰にとっての幸せなのですか?」
「さあ。でも、出家した修行者に出来ないことが幾つもあるわね。
他にも。修行を実践して、四聖諦を極めることが幸福であると謡っているわ」
私は少し疑問に思って、神様に尋ねた。
「四聖諦って何ですか?」
「苦諦・集諦・滅諦・道諦、四つの真理よ。
苦とは、この世は苦しみであるという事実。
集とは、苦の原因は煩悩や執着から生じるという事実
滅とは、煩悩や執着は滅することが出来るという事実
道とは、滅の過程で、悟りの境地に向かうという事実。
これらを見極め、世の中の些事に心を揺れ動かさないことも幸せらしいわ」
「……難しいですね」
「そうなのかもしれないわね。
貴方にとっての幸せについて、たまには考えてみたらどうかしら?」
そう神様は言った。私は幸せとは何かと考えながら、眠りについた