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すったんぱったん  作者: ha
6/10

アーラヴァカと勝利とムニ

「信仰というものは、祖先や神々を敬うことよ」

神様は、えへんと胸を張り、語り始めた。

「煩悩によって生じる試練は、信仰によって乗り越えられるわ。

 怠らないことで、貴方は境界線を越える。

 前向きであれば、先の見えない道も開ける。

 智慧を伴えば、全ては滑らかに上手く回り始めるの」

「どうやったら、その在り方は手に入るのですかね?」

人から煩悩はそう容易く消せない。それが難しいのだ。

「四つの徳を意識することが大切ね。

 誠実でありなさい。自制を持ちなさい。堅実でありなさい。耐え忍びなさい。

 日々を真面目に。ぼんやりと生きないことが、智慧を与えるわ。アーラヴァカ君」

アーラヴァカではないが、私は何とも言えない気持ちになった。

「人間はそう高尚じゃない。神を妄信でもすれば変わるんでしょうかね?」

「妄信はダメよ。敬うことは大切なのだけれどね」

そう神様は言った。私は神棚に二礼二拍手一礼してから、そのまま寝た。


ー------------


「美しい人間は好きかしら?」

神様は艶っぽい雰囲気を漂わせて、語り始めた。

「嫌いな人間はいないでしょうね」

「そうね。でもそんな美しい人間ですら、全身から汗や汚物を垂れ流すのよ。

 時が経てば老人となるし、時が来れば死ぬわね。

 美しかろうと、死体として野に捨てられたら…

 ハエや獣が貪り、時と共に何も残らなくなるわ」

神様は私を見つめて、悲しそうに笑った。

「…私もいずれ死にますからね」

「ええ。貴方に限らず、醜い死体が等しく人間の終着点よ。

 ゆえに他者と比較して、自分を特別と思ってはいけないの。

 理解して貪欲さから離れれば、安らぎは訪れるわ」

そう神様は言った。私は如何わしいサイトへの登録を辞めて、そのまま寝た。


ー------------


「ムニというものは、出家して解脱を目指した聖者のことよ」

神様は、目を瞑って仏のように、語り始めた。

「現代社会では、出家して托鉢なんてとても無理ですがね」

「そうね。あとは、不殺生戒というのも、非常に難しいわね」

生き物を殺さないことも、ムニは心掛けていたらしい。

「曰く。頼ることなく。悩まされることなく。欲を知りても、望むことなく。

 智慧があり。一人でも怠ることなく、正しく行動をする。

 煩悩より生じる過ちを犯さず。人に平等であり、驕ることなく。

 世間をよく知り、苦しみを乗り越えた者。が、ムニよ」

「なんですかその超人。私には無理ですよ」

ムニとはなんだ、と私は何とも言えない気持ちになった。

神様はケラケラ笑った。

「人間は面白いわね。初めは皆、無理なものよ。

 仏の教えにもあるけど、人の意思や解釈は蛇に似てるわね。

 頭以外を掴むと、翻ったその牙で報いを受けるのだから。

 だから貴方は、教えや決めたことを歪めないように気をつけなさいね」

そう神様は言った。一旦の締めくくりらしいので、私は普通に寝た。


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