ダニヤとサイ
「持てる者はその物に執着して、そこに幸せの根源を感じるわ。
捨てた者は持たぬことによって、その拘りから放たれるの」
神様は、自由の女神のように手を広げて、語り始めた。
「本当の幸せとは、拠り所を持たぬところから得る必要があるのかもしれないわ」
「でも何も持っていないホームレスって大変そうですよね」
「……そうね。ダニヤ君」
ダニヤではないが、私は何とも言えない気持ちになった。
「ただね。仕事、お金、恋人、家、友達、全ての執着から解き放たれたらどうかしら?
そして。本当にホームレスがみんな不幸せとあなたは思えるのかしら?」
問われてみて。幸福とは主観であり、確かに私は自分が思い違いをしているように感じた。
「現代社会を生きる人間には難しいものですね」
「うん。だからまあ、貴方はほどほどに執着を捨てれば良いんじゃない?」
そう神様は言った。私は煩わしい人間を着信拒否して、そのまま寝た。
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「他人に依存しちゃダメよ。集団に甘えてはダメよ。欲に溺れちゃいけないわ」
神様は、サイの角を手で形作り、語り始めた。
「サイの角のように、たった一人で進みなさい。自分だけが自分を救うわ。
そしておごることなく、高ぶることなく、精進していくべきね」
「一人というのはなかなか難しいですね」
「まあ同じ志を持つ、尊い人ととなら。共に道を歩んでも良いのでないかしら?」
一人じゃなくても良いものか?、とサイの一角を想像しながら思った。
「ただし。感情からも、愛着からも、妄想からも…執着からは逃れなさい。
自分本位でなく、勇ましく美しい生き方をしましょうね」
そう神様は言った。私はネトゲのアカウントを削除して、そのまま寝た。