081:本当の強さ
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―13年前・ロシア連邦ウフタ・郊外のスラム―
ノースの地元はロシアの中でも1番と言って良いほどの貧困地区だった、ノースの父親はノースが5歳の時に戦争に駆り出されて激戦の中で戦死してしまう事になる。
「これからは、私たちだけで強く生きていくのよ…………その為に、ノースも他者に負けない強い人にならなきゃダメ」
「分かったよ。僕は、母さんも守れる様な人になって、父ちゃんに自慢できるだけになるよ…………」
ノースと母親は2人で父親の墓に誓う、これからは2人で貧困の中を生きていく事を、しかしそれから2年が経ったノースが7歳の時に母親は病死してしまったのである。
ノースの目は生まれてから不条理なモノしか写さない、その為にノースの目から光が失われ全てを奪われる、そんな時にノースは親戚のジムオーナーに養子として入った。
「お前は、もう1人で生きていかなくてはいかん…………その為に他者に負けないだけの力をつけるんだ!!」
「分かりました。僕は強くなりますよ…………父ちゃんや母ちゃんの様に、負ける様な事はありません」
ノースの親戚の人はノースに生きる為に、貧乏の自分を脱却しなければいけないと言って格闘技を教えた、ロシア連邦では格闘技が人気で成功すれば多額の金が得られる。
ノースはアマチュアや地下格闘技で、多くの戦績を残したがロシア格闘技連盟はプロ選手とは認めてくれていない、その為にノースは日本に武者修行するべく渡航した。
(こんな島国に、僕に勝てる人間なんていない…………僕は誰よりも強い戦士になったんだ)
ノースは日本にやって来て数多くの同世代を倒す、しかしある日に圭吾とのスパーリングが決まる、圭吾も他の日本人とも同じだろうと思いながらスパーリングを始める。
だが圭吾とスパーリングをしてみると、圭吾からは他の人たちは違う様なオーラを感じた、そして何が違うのかノースは気がつく、それは他者よりも楽しもうとする精神だった。
(こんな選手がいるなんて、僕は格闘技というのを捉え違えていたかもしれない…………僕は彼の様に、強いファイターにならないとダメなんだ)
ノースは圭吾に格闘技とは何かやファイターとは、どんな人間でなくてはいけないのかを学ぶ事が出来たのである。
―ロシア連邦・サンクトペテルブルク―
ノースはブラウンとの試合を行っているが、第2ラウンドまで互角の試合を行っていた、試合の結果はラストの第3ラウンドまで伸びたがノースの気持ちは切れていない。
(こんな相手に、僕とライバルたちを否定させない…………僕の方が、お前よりも強いんだ!!)
(こんなガキに、最終ラウンドまで耐えられるなんて!? こんな屈辱は感じた事はねぇ…………ぶち殺してやる!!)
ブラウンはノースに対して勝てていない事が最大の屈辱だと思っており、早く倒したいという気持ちでブラウンは前傾姿勢になって高撃を仕掛けていくのである。
ノースはギリギリで攻撃を避けると、ブラウンの顎にアッパーのカウンターを入れてブラウンを後退させる、それを見たノースは鬼の形相で追い討ちをかけていく。
(こんなところで負けられない!! お前なんかに負けるなんてあり得ない…………僕を舐めるなよ!!)
(どうなってんだよ!? 18やそこらのガキの顔じゃねぇぞ…………地下格闘技の底力を見せてやる!!)
ノースが向かってくるのに対して、ブラウンも真っ向から受けて立つと決めて飛び出していく、そしてブラウンは右拳をコンパクトに構えてからノースに向かって放った。
(なんだと!? コンパクトに拳を合わせたはずだ…………それなのに、なんで避けられるなんだよ!!)
(この一撃は、これからの僕を決定づける…………だからこそ、渾身の一撃で勝負をつける!!)
ブラウンの拳を顔スレスレで避けると、ノースはクロスカウンターをブラウンの顎に貫いた、それを喰らったブラウンはやり返す事なく地面に倒れてピクリとも動かない。
この瞬間にノースの勝利が決まって、ロシアチャンプとして2度目の防衛戦を終了させた、激戦だった為にノースはリングに尻餅を着いて天を仰ぐ様に仰向けに倒れる。
(父さんは、死ぬまで僕の事を優しいと言ってた…………でも、本当の僕は人を殴って勝つと喜ぶ人間だったな)
ノースは自分が格闘技で人を傷つけている事に対して、父親の言っていた様な優しい人間ではないと感じていた、しかしトレーナーの親戚の叔父さんがノースに抱きついて喜ぶ。
「お前の後ろ姿が、兄貴に似ていたぞ!! 本当に、お前は強い人間だ…………兄貴たちに見せてやりたい!!」
叔父さんは初めてノースに、父親も格闘技をやっていた事を明かした、ノースから見て父親が強かった理由を少し垣間見れて嬉しいと思っているのである。




