075:憧れの選手
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―倉知ジム―
圭吾が試合の違い建とスパーリングをして、少し休憩しようと座ったタイミングで倉知会長がやって来た、そして圭吾にスパーリング相手を連れて来たと言うのである。
「小僧のスパーリング相手を連れて来てやったぞ!! 新人ではあるが、かなりのポテンシャルを持っている」
「お、お前は!? どうして、お前が倉知ジムに来てるんだよ…………もしかして、このジムに移るんじゃ無いよな?」
倉知会長が連れて来たスパーリング相手は、建と同い年でガタイは圭吾よりも良い、それもそうスーパーライト級という1つ上の階級の選手だからである。
そして名前は《嶋原 果南》と言うのであるが、建は果南の顔を見た瞬間に指を刺して大声を出した、建と果南は知り合いである事が圭吾は直ぐに理解した。
「このジムは素晴らしいが、俺は圭吾さんと試合がしたいからな…………このジムには移らないんだよ」
「それなら、ただスパーリングをしにやって来ただけだって言うのかよ…………」
「こんなチャンスは無いからな。お前は当たり前になって、有り難みが分かって無いんじゃないのか?」
果南は圭吾の事を尊敬していると宣言した、そして2人は口論を始めようとした時に、倉知会長が割って入り果南には準備をする様に言って揉め事を終わらせるのである。
「アヤツは、全日本新人王になった男じゃ…………東日本新人トーナメントでは、建にギリギリで勝っておる」
「新人王戦までは、ライト級だったんですね? 新人王になるパワーがあって、さらに階級を上げているとは」
なんと果南は全日本で新人王になっている男だった、そして今は階級を上げてパンチ力も跳ね上がったと言う、圭吾が最速で復帰するには適した相手だと言うのである。
「本当に、お前が圭吾さんに勝てるのか? あん時は僅差で負けたが、階級を上げなければリベンジしてるところだ」
「なんと言うが、勝ったのは俺だからな…………それに、お前の様に圭吾さんと試合をするのを諦めるとは」
格闘技の世界では同ジム同士の試合は行えない、2人は圭吾に憧れていながらも対極の選択を行った、それのせいで2人は分かり合えていないのである。
そんな問答をしているうちに、ゴングが鳴らされる準備が整って2人はリングに向き合う、そしてスパーリングのゴングが鳴らされると果南は顔の前にガードを固めて詰める。
(ガッチリとガードを固めて戦うスタイルか…………この相手には、真っ向から戦うのはダメなんだよな)
圭吾は階級が上の人間に、本気でガードをされている場合は無理に攻め込んでも体力を消耗するだけだと知っている、なので慎重に近づきながら間合いに入ったところで打つ。
流石に1発目ではガードは崩れない、そこでフックを打ってからボディに蹴りを入れる、果南の姿勢が低くなったタイミングで頭の上から右の閃光を打ち込むのである。
(さすがは、日本チャンピオンだな…………この人のパンチと戦い方には、憧れを抱かせるモノがあるんだよ!!)
(閃光を初見で喰らって、余裕そうにされたのは初めての事だな…………これは油断をすれば持ってかれる!!)
果南は圭吾のパンチを貰って喜んで顔を上げる、その目を見た圭吾は自分たち側だと瞬時に理解した、その為にガードを固めたまま後ろに下がって距離を取るのである。
反対に果南はジリジリと近寄っていき、ローキックから左のフックを圭吾の横っ腹に命中させる、圭吾は顔を歪めながらロープまで下がってしまうのである。
(ボディが有効に使って来やがる!? これで本当に新人だって言うのか…………パンチのクオリティが高いぞ!!)
圭吾は驚いたせいでカウンターの手が止まる、そこに追い討ちをかける様に果南は前に出て来る、圭吾は身体を丸めてガードを行いながら逃げる方法を模索する。
(新人に良い様にされるわけにはいかねぇ!! ここで見せるのは、正直なところ嫌だが…………そんな事を言ってられる程に余裕は無いんだ!!)
圭吾は果南を認めた上で使いたくなかった、新必殺技を使うしか無いと決断した、その技とは身体を左右に揺らしながら左右のリズムに合わせてブローを打ち込む攻撃だ。
この攻撃であればゼロ距離であっても、果南に対して有効的なダメージを入れる事が出来る、そしてこの技は魚の尻尾をイメージしているので〈フィッシュブロー〉と名付ける。
(さすがは圭吾さんだ!? こんなゼロ距離から、こんな強技を出してくるなんて…………それに、この技は見た事がないという事は、新必殺技って事じゃないか!!)
果南は自分の尊敬する人から隠し球を出させて、とても嬉しいと戦闘中にも関わらずにニヤッとした、そして圭吾は後手に回ると果南に対して不利だと思って前に向かう。




