073:渦の中
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―東京都・圭吾の家―
学校を休んでいる圭吾のところに、穂花がやって来て料理をすると言ってキッチンを借りた、その間に圭吾は祖母の遺品を片付けようと祖母の部屋に入って始める。
(婆ちゃんは、編み物とか好きだったもんなぁ…………こんなに編んでたなんて、俺も頼んでおけば良かったなぁ)
圭吾は祖母の遺品を片付けていると、色々な思い出のモノが出て来て涙が溢れてくるのである、そして押入れの奥の方に四角い箱があり、何かと思って開けてみた。
その箱には何やら長い布の様なモノが入っていた、それを見つけた圭吾は何かと思って広げてみる、すると圭吾の目に飛び込んで来たのは横断幕だったのである。
《夢、届ケルモノ》
(なんだよ。この悪趣味な横断幕はよぉ…………こんなのを作ってくれてたのかよ)
この横断幕は祖母が圭吾の為に作った手作りで、圭吾は世界中に夢を届ける人間になって欲しいと想いが込められている、圭吾は横断幕を抱きしめて泣いている。
穂花は料理が出来て圭吾を呼びに行こうとしたが、今の光景を見て少し穏やかな顔で圭吾の名前を呼ぶ、圭吾は食卓に座り飯を食べ始めるが元気は無いままである。
「散歩に行きましょう!! そうすれば、少しは気分が変わると思うので…………どうでしょうかね?」
「そうだね。外の天気も良いし…………久しぶりに、穂花さんと会いましたし…………」
穂花は圭吾を食事後に散歩に連れ出すのである、外に出ると圭吾は下ばかり向いているので、穂花は天気が良いから上を向いて歩こうと言って上を向かせた。
そして河川敷で休憩しようと芝生の上で、2人は座って河川敷でサッカーをしている子供たちをみる、その子供たちをみる穂花は綺麗な横顔をしていたのである。
「こうやってみると、子供の頃って不幸な事があっても幸せだと思う方が多かったですよね…………人間というのは、楽しかったら辛い事でも楽に感じるんですよ?」
「そ、そうなんですね? どうして、それを今のタイミングで言ったんですか…………」
「圭吾さんが辛そうに見えたからですよ。決して気持ちを分かるなんて言いません…………しかし、私は彼女として家族として頼って欲しいんです!!」
穂花は圭吾に頼って欲しいのだと言った、それを聞いた圭吾は心の中で葛藤している、弱みを相手に見せて良いのかという強がりの気持ちが湧いてきてしまった。
「もしかして弱いところを見せちゃいけないとか思っているんじゃ無いんですか? そんなのは、弱い人がやる事なんです…………自分だけが不幸だなんて思わないで下さい!!」
「…………」
「私もジムの皆さんだって、圭吾さんと同じように家族だと思っているので辛いんです…………だから、辛い同士で互いに背中を預け合うのが普通だと思いますよ?」
「そうか。俺は強がろうとしていたのか…………穂花さんに顔面を殴られた様な気持ちだよ」
穂花は自分たちも圭吾の家族だと思っているので、互いに弱いところを見せ合って欲しいと言うのである、それを聞いた圭吾の中で辛かった気持ちが少し壊れた。
それを聞いた圭吾は久しぶりに笑顔を見せた、そして穂花を家に送ってから圭吾も家に帰るのであるが、圭吾の家の前に黒羽が立って待っていたのである。
「こんなところで、どうしたんですか?」
「お前の話を聞いてな。線香を上げるくらいはしてやらねぇとな…………中に上がっても良いよな?」
黒羽は家の中に入ると仏壇のところに行って、正座をすると静かに手を合わせて目を瞑る、そして手を合わしたところで圭吾の方を向いて少し話を行うのである。
「お前と彼女の話は聞いたが、俺は圭吾を甘やかす気は無いからな…………俺の試合がある事は聞いたな? 世界は広いってのは理解しているんだろうな?」
「完全に吹っ切れるには、時間はかかると思いますが格闘技を続けようとは思っています…………それに黒羽さんが言う様に、世界チャンプにもなりたいと思っています」
「テメェにチャンプは早いが、世界チャンプになった時には天国にも届くと思うぞ…………まぁ。俺は俺の世界戦に向けて調整を行うが、怪我が良くなったらトレーニングをやれ」
黒羽は圭吾に対して自分なりのエールを送る、圭吾も不器用ながらも心配してくれているんだと感じて、圭吾は涙を流しながら黒羽に感謝をするのである。
圭吾は凹んでいても祖母は喜ばないと思って、次の日から怪我も回復したので倉知ジムに顔を出した、建たちは心配していたんだと言って駆け寄ってくるのである。
「心配かけた様で、申し訳ありませんでした…………完璧とは言えませんが、これからも頑張っていきます!!」
謝罪をしている圭吾の姿を倉知会長は、影から見ており腕を組んで静かに天井を見ているのである。




