062:背を向ける
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―後楽園ホール―
圭吾は第1ラウンドから灰谷に対して、テイクダウを取ってはパウンドパンチを繰り出す、追い込まれている灰谷は何とか足を絡ませてテイクダウンの状態から立ち上がる。
(どうなっているんだ!? コイツが、こんなに強いはずがねぇんだ…………俺の〈三位一体の構え〉が、初見で上手く逃れられたなんて、あの怪物以来だぞ!?)
灰谷の構えは〈攻撃〉〈防御〉〈移動〉の3つが噛み合っている名前と思っており、この構えを初見で破った人間は圭吾の他に怪物の異名を持つ〈西郷 和馬〉だけと言う。
その為に圭吾の相手を震え上がらせる様な目には、灰谷も少しだけ動揺してムキにさせるのである、それでも圭吾は自分のペースを崩す事なく構えている。
(さっきのタイミングで良いのか。それなら、いくら構えられようとも倒されるイメージは無いな…………)
圭吾は隙だらけの灰谷に対して、このままならば倒される事は無いと安堵して楽に戦いを進める、圭吾は左ジャブを打つと見せかけて伸ばし切る前に右ストレートを打つ。
それが灰谷の顔面を貫いた、灰谷が距離を詰めすぎたら不利だと思って後ろに下がるのであるが、圭吾は下がるのを見てボディに右中段蹴りをクリーンヒットさせる。
(ぐは!? こんなにも、コイツは強いのか…………)
圭吾は第1ラウンドでは仕留めきれずに、第2ラウンドに入って行くが観客的には、いつ圭吾が灰谷を倒してしまってもおかしくは無いと思い始めているのである。
(とにかく、このスタイルを貫きながら的確に急所を狙うしかねぇな…………やってやるよ!!)
(相手のペースは掴めて来たから、このラウンドで完全にノックアウトさせてやる!!)
灰谷は距離を詰めて行くと圭吾も合わせてインファイトにスタイルを変える、灰谷の肩入れスタイルはインファイトに向いているので圭吾に少しだけ打撃を当て始める。
しかし圭吾も直ぐに理解して、頭を揺らしながらボディに対して的確にパンチを入れてから、圭吾は灰谷の顔面を狙って回し蹴りの踵をクリーンヒットさせて倒させる。
(ダメだ!? こんな奴に勝てるわけねぇ…………コイツらとは、生きる世界が違うんだ!!)
灰谷は自分と和馬や圭吾の住む世界が違うのだと思って完全に相手に背を向けて蹲ってしまった、それを見てトレーナーは無理だと判断しタオルを投げ込み試合が終わった。
「よっしゃああああ!!!! これで、王座決定戦の挑戦権を得たぞ!!」
「良くぞ、やったわい!! 相手が格下とはいえど、完璧な内容で圧倒して勝ったわい!!」
圭吾の試合の内容は素晴らしいモノで、完全に灰谷を圧倒してから完全に心を折らせると言う内容だった、この試合を見ていた観客たちは立ち上がって興奮している。
しかし後楽園ホールに、ただ1人だけ気が気じゃ無い人間が座って見ている、その人間は〈GJF第1位〉の《田嶋 真理》だったのである。
「こんな後輩くんとやり合うなんて、少し自信がなくなって来ちゃうなぁ…………試合辞めようかなぁ」
「そんな事を言わないの!! 真理くんなら勝てるから、諦めないで頑張ろうよ!!」
真理は彼女と圭吾の試合を見に来ていて、この真理こそが3ヶ月後に〈ライト級王座決定戦〉を行う対戦相手である。
―ロシア連邦・モスクワ―
ロシアの首都モスクワにある〈モスクワ国際スタジアム〉に観客が集まって総合格闘技の試合が行われている、その控え室には〈ノース=クリエス〉の姿もあった。
「お前にも、遂に春が来たのか…………ここの開催者の人には、感謝をしなければいけないなぁ」
「そうですね。ここで結果を残せば、タイトルマッチになる可能性がありますから…………それに、この事をライバルの人にも話さなければ行けませんね」
この大会の開催者がノースの試合を偶々目にして気に入ったので招待された、ここで結果を残せば群雄割拠のロシア戦線に参加できると気合が入っているのである。
そしてノースは動揺で出会ったライバルにも、この嬉しい事態を報告したいと静かに笑っている、そんな事をしているとスタッフがやって来て準備する様にと言われる。
『青コーナー!! 体重〈133ポンド〉戦績〈3戦3勝0敗…………無所属〈ノース=クリエス〉!!』
『赤コーナー!! 体重〈134ポンド〉戦績〈12戦12勝0敗………ロシアライト級1位。ファイトナイツ所属〈エンドリュー=ピューマー〉!!』
ノースの対戦相手はライト級で1位の選手で、若手の中では世界に出れる選手だとファンが多い選手である、その為に格下のノースに対してブーイングが集まっている。
(コイツには、申し訳は無いが俺の引き立て役になってもらおうじゃねぇか…………)
エンドリューはノースを当て馬だと思っているので、その為に舐めて前に出て行くと、高速蹴りがエンドリューの頭にクリーンヒットして後ろに尻餅を着く。




