006:歩くモノ止まるモノ
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―東京都・足立区・土手―
圭吾はジムでのトレーニングで、力を使い果たしてしまって倒れ込む様に土手の芝生で眠っているのである。
「あれ? 圭吾くんだよね? こんなところで、何をしてるの…………それに、なんでボロボロなの?」
「ん? な、なんで〈穂花〉ちゃんがいるの!?」
圭吾が土手で眠っていると、同じ高校のクラスメイト《川口 穂花》に声をかけられた。
圭吾は突然に穂花が現れたので、驚いて起き上がると身体中がボロボロなのを穂花に見られてしまうのである。
「これは、総合格闘技をやってるからだよ…………それで、川口さんの家って足立区じゃないよね?」
「うん。そうなんだけどね…………婆ちゃんの家が足立区にあって、体調が悪いからお見舞いに行くんだよ」
「そうなんだね。それじゃあ、俺も家に帰ってから寝ようかな…………それじゃあ。また明日ね!!」
圭吾は女子とあまり話した事が無いので、恥ずかしさから立ち上がると走って家の方に向かうのである。
「圭吾くんって格闘技やってるんだ…………ちょっと意外かもしれないなぁ」
穂花は喧嘩ばっかりの圭吾が格闘技をやっているのが意外だと、少し頬を赤らめながら呟くと婆ちゃんの家に向かう。
―2日後・亀有・倉知ジム―
いつも通りに圭吾は腕立てをしていると、倉知会長がやって来て何かの紙を圭吾に見せて来るのである。
「こ、これって何なんですか? 新人王トーナメント表ってつまりは…………対戦表ですか!?」
「何々!! 圭吾の対戦表が決まったのか!?」
「見せてみろっ!! どれどれ強そうなのは、同じ区分の方にいるかなぁ…………」
倉知会長が持って来たのは東日本新人王トーナメントのライト級の対戦表であり、対戦表という言葉を聞いて加藤と深澤がやって来て対戦表に目を通すのである。
「ライト級は11人が参加するんだな…………おっ。圭吾の初戦の相手は〈ボンバー大谷〉って選手だな?」
「掃討自分のパンチ力に自信があるんだろうな…………それに準決勝では、アマチュア選手権の優勝者もいるな」
「強そうな人間じゃ無いと面白く無いですよ!! 俺は最強になる為に、このジムに入ったんですからね!!」
圭吾の初戦の対戦相手は〈ボンバー大谷〉という選手で、準決勝にはアマチュア大会で優勝した人だというのである。
そんな風に東日本新人王トーナメントの話をしているところに倉知会長は、まずは目の前の事だという。
「目の前の事ってのは、東日本新人王トーナメントの事じゃないんですか?」
「まずは、小僧のデビュー戦じゃろうが!! それに勝ってから新人王戦について考えようか…………デビュー戦の相手は、かつて〈神童〉と呼ばれた男じゃよ」
「デビュー戦の相手は〈元神童〉ですか…………どんな相手でも全力を尽くす事に変わりはありません!!」
「そのいきじゃ!! その気合いがあれば問題はないじゃろうな…………絶対に勝つぞ!!」
圭吾は東日本新人王トーナメントの前に、デビュー戦が控えていると言って、デビュー戦の相手は〈元神童〉と呼ばれて居た《工藤 務》である。
―東京都・渋谷区・ファミレス―
渋谷区にあるファミレスに2人の男女がいる、2人の間には気まずそうな雰囲気が流れているのである。
「貴方が、これ以上ボロボロになるのは見られない…………これ以上続けるのなら別れましょ」
「別れるだって? お前が殴られているわけじゃないのに、何が辛いっていうんだよ…………」
「それが分からないくらいに、貴方は殴られ過ぎているんだから…………貴方の身体は貴方のだけじゃないの!!」
「分かったよ。次の試合で負けたら、潔く総合格闘技を辞めることにするよ…………」
この男は圭吾のデビュー戦相手の工藤だった、そして迎えにいるのが工藤の彼女で、彼女は工藤が格闘技を続ける事に反対だと言って続けるのなら別れると言うのである。
それを聞いた工藤は飲み物をグビッと飲み干して、覚悟を決めた様に次に負けたら潔く辞めると断言した。
「良かったわ。貴方も昔は神童だって言われて、囃し立てられていたけれど…………貴方は格闘技に向いて無かったの」
「確かにそうかもしれねぇな。新人王トーナメントでは、調子よく準優勝したが…………そっからは地獄だからな」
「それでも貴方は素晴らしい人よ…………だから、これからの事を考えましょうね」
工藤は自分たちの世代では新人王トーナメントで準優勝するくらいの実力はあったのであるが、そこからは戦績が伸びずに日本ランカーにすらも届かない選手になっていた。
2人はファミレスを後にすると各自の家に帰る事になるのであるが、工藤の方は雨に降られてしまいながら家である、ジムに到着するのである。
「お前!! 次の試合が近いのに、体調管理をするつもりがあるのか!!」
「親父。俺は次の試合で負けたら、引退するよ…………買ったら続けるけどな」
「なっ。そうか……その覚悟が出来たか」
工藤のジムは自宅であり、コーチは自分の父親であるが父親に引退する事を伝えるのである。
それを聞いた父親は少し切なそうな顔をしてから、ニコッと笑って全力を尽くそうとミットを構える。