058:カウンターの鬼
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―八王子・明智ジム―
この明智ジムは圭吾の対戦相手〈灰谷 馨〉の所属しているジムで、圭吾との試合が1ヶ月ちょっとに近いているにも関わらずに緩い練習メニューをこなしているのである。
「灰谷!! この練習メニューじゃあ、次の対戦相手に苦戦してしまう…………メニューをキツくするんだ!!」
「明智さん。あんな格下のガキに、負けると思っているんですか? 俺の事を舐めてるんですか…………あんなのに負ける時は、俺が引退する時ですよ」
「そんな事を言っていると、本当に負ける事になるぞ………次の対戦相手は、チャンピオンをダウンさせた唯一のファイターなんだぞ!!」
「何を言ってんすか。そんなのは、ビギナーズラックに決まってるじゃないっすか…………じゃなきゃ、おかしいっす」
トレーナーに練習メニューのキツさを上げる様に言われたのであるが、圭吾の事を完全に見下しているのでチャンピオンとの良い試合をしたのもフロックだと思っている。
―さいたまスーパーアリーナ―
遂に和馬としては最高の瞬間とも言える、IMAスーパーライト級タイトルマッチの日がやって来た、そして弟の敦也のOPCスーパーライト級の2階級制覇の試合もある。
「こんなところで、兄貴の前座をやるとは思っていなかったが…………兄貴の試合の前に、客を帰らすくらいの満足する試合をしてやるから覚悟をしておけよ」
「お前は昔から変わらないな。俺と張り合っても、総合格闘技は楽しくないだろ…………まぁ。どう思っても良いが、恥を晒す様な試合だけはしないでくれよ」
「そんなの決まってるだろうが!! 兄貴こそ寒い試合をして、世界タイトルマッチを台無しにするなよ!!」
敦也は和馬のところにやって来て絡むのであるが、和馬が大人の対応した事でムキになって敦也は帰って行く、控え室に帰ると圭吾がやって来て居たのである。
「和馬さんのところに行ってたのか? お前の試合に、集中した方がいいと思うが…………そんなところも、お前らしいといえばらしいのかもしれないな」
「お前も見に来ていたのか? 見せてやるよ。テメェと俺の違いってのをな…………言って来るから、さっさと観客席に行って試合を指咥えて見てろや」
「そんな汚い事はしないが、お前の試合なら期待してるから頑張って来いや…………そして、さっさと世界に出ろよ」
「そんなのは大きな世話だ!! お前こそ、さっさと日本チャンピオンになってみろ…………じゃあな」
敦也と圭吾は少し辛口の言い合いをしてから、敦也は試合に向かっていき圭吾は観客席に向かって行く、敦也はフードを被ってアリーナまでの道を歩いて行く。
『これより〈OPCスーパーライト級タイトルマッチ〉を行いたいと思います…………選手入場!!』
『青コーナー!! 体重〈140ポンド〉戦績〈13戦12勝1敗〉…………OPCライト級王者。京都ジム所属〈西郷 敦也〉!!』
『赤コーナー!! 体重〈140ポンド〉戦績〈23戦20勝3敗〉…………OPCスーパーライト級王者。ガーダラジム所属〈エルロット=ラモス〉!!』
両選手たちは入場するのであるが、敦也の方は真顔で入場して来てからエルロットの方はニヤニヤしている、その為に観客たちは戦力差があるのではないかと思っている。
「相手は組み合って行くのが得意だからな。距離をとって組み合わない様に、打撃を打ち込んでいけ!!」
「なんの問題もないですよ。やる事はやって来たんで、兄貴の試合の前に寒い試合を出来るわけないっす」
敦也は兄貴の試合の前に、無様な試合をしたら評価が下がると思っているので負けられないと思っている、その為に気合が入っていて殺気すらも纏っているのである。
そしてゴングが鳴って試合が始まるのである、エルロットは組み合いが得意なので距離を詰めたいと思っている、それを警戒して敦也は距離を近寄りすぎない様にしている。
(このジャパニーズは、カウンターを得意にしてたな? それなら組み合って倒せば、簡単に勝てるな!!)
エルロットは敦也を組み合って倒せば勝てると確信する、倒す為に近寄って行くと鋭いパンチが顔面を貫く、そして距離を取られるので懐に飛び込めずにいるのである。
エルロットは顔を狙って攻撃してから、敦也の上半身を狙ってタックルする為に低い体勢で飛び込んでいく、しかし敦也がカウンターの飛び膝蹴りを入れて鼻血を出させた。
「あんなに完璧に、膝を合わせられるのか…………俺も闘う事があれば、懐に入るのは危険かも知れないな」
圭吾は試合を見ながら敦也の強さを感じていた、そしてエルロットも敦也に組み合うのは無理かもしれないと感じて、ファイトスタイルを試合中に変える事にした。
それに対して敦也の方は完全にカウンターをモノにしていて、エルロットの動きの癖も盗み始めており、完全に相手のペースを握り始めているのである。




