052:最速の作戦
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―東京帝国ホテル・会見会場―
黒羽は倉知会長と一緒に、タイトルマッチに向けた会見を行う事になっているのであるが、早く飯を食べたいと言う理由でイライラしていて、圭吾たちは記者の後ろで見ている。
「質問をしても、宜しいでしょうか? 初めてのタイトルマッチという事ですが、緊張感というのはありますか?」
「緊張感だぁ? ふざけた事を抜かすんじゃねぇよ。明日の試合後に、俺の腰にはベルトが巻かれてるんだよ!!」
「この様に黒羽選手は自信がありますが、ゲンディ選手は防衛する自信はありますか?」
「彼は素晴らしいファイターだと聞いている。防衛するのは簡単では無いだろうが…………私は母国で英雄と呼ばれているから、簡単に負けるわけにはいかないよ」
記者は2人に似たような質問をするのであるが、黒羽は相手を貶す様な発言をしたが、ゲンディは母国を背負っている事を強調して質問をあしらうのである。
両者は向かい合ってファイティングポーズを取って、記者たちが写真を撮るのであるが、写真を撮り終わるとゲンディは握手を求めるが黒羽は握手を断った。
「どうして握手を拒否したんですか? アレでは黒羽さんが悪者の様に、記者に書かれるのでは?」
「俺は対戦相手とは握手しねぇんだよ。少なくとも、明日には殴って蹴ったりするんだ…………少しでも、情が移っちまったら試合にならねぇだろうが!!」
圭吾は黒羽になんで握手をしなかったのかを聞くと、対戦相手に情が移ったら試合にならなくなるからと言う。
それを聞いて圭吾は、それは確かにと納得して自分もやってみようと勉強になったと思っているのである。
―さいたまスーパーアリーナ―
遂に黒羽の世界タイトルマッチの日がやって来た、黒羽はメインの試合なので控え室で眠っているのである。
圭吾たちも控え室に待機していると、控え室に南野がやって来て黒羽に挨拶をしてから試合に向かうと言う。
「この試合に勝てば、お前も〈GJF〉に名乗りを挙げる事になるのか…………もう1回、試合がしたいところだな」
「お前も階級を上げればいいじゃねぇか…………あんな不甲斐ない試合を見せられた気にもなれよ」
「今日の試合は、面白い試合になるんだろうな? テメェが圧勝するのを期待してやっからよ」
「お前に期待をされなくても、なんの問題もねぇよ。お前も8月に試合があるんだろ?」
圭吾と南野はライバル関係にあるので、少し皮肉を言ってから握手をして互いの健闘を讃えあうのである。
そして南野は黒羽に挨拶をしてから控え室を後にして、舞台袖に着くと名前のコールをされるのを待っている、今回のリングはロープではなくフェンススタイルである。
『青コーナー!! 体重〈147ポンド〉戦績〈12戦11勝1敗〉…………共栄ジム所属。〈南野 蓮夜〉!!』
『赤コーナー!! 体重〈147ポンド〉戦績〈20戦18勝2敗〉…………沖縄拳闘会所属。〈浅倉 道吉〉!!』
両者はフェンスの扉から入って軽いストレッチをする、セコンドの人間はフェンスの中に入れないので、外で待機しながら最終確認を選手と行っているのである。
そして両者の紹介からゴングが鳴る、南野は自分の顔の頬を叩いて鼓舞すると、南野は自分の方からジリジリとステップを踏みながら近寄っていくのである。
(コイツの特徴は、前に出ていくのと後ろに後退する判断が良いって聞いたな…………それなら、こっちも前に出るか)
浅倉は前に進んで行き南野と向かい合っている、そして浅倉は左のオーバーハンドを行おうとしたが、振り抜く前に南野は脇から手を入れて左腕を掴むのである。
(なんだと!? 後ろに下がるどころか、前に出てくるなんて…………しかも腕を固めてきやがった!?)
(浅倉は俺の弱点やらを調べているのは、なんとなく分かっていた事だ…………それなら、新手の作戦を使うまでだ)
南野は浅倉が自分の事を調べ尽くしているのは、知っているので〈即興〉の攻撃をしようと考えたのである。
その為に南野は普段は使わない組手を使って、浅倉を捕まえて暴れる浅倉に対して、南野はバックドロップを行ってからテイクダウンを取って優勢に立つ。
「ストップ、ストップだ!! 既に決着は着いてる!!」
南野は必死になって浅倉の顔面を殴っているが、気がつけばレフェリーに停められていて、浅倉は白目を剥いて口や鼻からも血を流して気を失っていたのである。
その瞬間に第1ラウンドで、南野自身では最速の速度で相手の事をKOさせる事が出来た、観客からは歓声が上がっておりメインマッチの前に素晴らしい試合だと評価する。
「これからタイトルマッチだろ!? 黒羽ならやってくれるんじゃ無いのか?」
「確かに期待はするけど、相手はアゼルバイジャンの英雄って言われてて…………5階級を制覇してる選手だろ?」
「それでも勝つんだよ!!」
黒羽とゲンディの試合結果は、まさしく五分の五分で完全に試合予想が出来ない状況になっているのである。




